上原が背水マウンドで今季初勝利「野手のみんなに、ありがとう」
■交流戦1回戦 ヤクルト1-2日本ハム(5月30日、エスコンフィールド北海道)
悔し涙から約1カ月「空振りが取れるボールを磨いた」
背水の覚悟を白球に込めた。日本ハムの上原健太投手(29)が30日、エスコンフィールド北海道で行われたヤクルト戦に先発登板。6回1失点の力投で今季初勝利を挙げた。大事な交流戦初戦を制し「勝てば勢いに乗れると思っていたので、かなり意識しました。本当に野手のみんなに助けられて、ありがとうと言いたいです」。再三の好守で盛り立ててくれたチームメートに感謝した。
涙の敗戦から約1カ月。ようやく笑顔を取り戻した。4月は3度、先発のチャンスに恵まれながら0勝2敗と結果を残せなかった。五回途中で交代を告げられた4月16日の西武戦では、降板後のベンチで人目もはばからず涙した。2軍降格後は「どうしても三振が欲しい場面で空振りが取れなかった。フォーク、スライダーと空振りが取れるボールを磨いてきた」と、決め球の精度をテーマに投球を見つめ直した。
先頭四球は厳禁…再出発の重圧「見事に四球を4つも出してしまった」
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再出発を期して迎えたこの日のマウンド。過度なプレッシャーが手元を微妙に狂わせた。1軍合流直後に新庄監督から掛けられた言葉が、何度も脳裏をよぎったという。「『前回と同じ失敗はナシね。先頭の四球だけは絶対ダメだよ』と。一発目にその言葉を言われて、頑張りますと答えたけど、見事に四球を4つも出してしまった」。
勝負球ともくろんでいたフォークやスライダーはことごとく抜け、何度も得点圏に走者を背負った。制球難で自滅しかける中で、生命線をつないだのは「投げすぎなぐらい投げた」と振り返るカットボールだ。同点の五回2死一、二塁で4番・村上を迎えた場面では、フルカウントから外角低めいっぱいに決め、見逃し三振に仕留めた。本調子とはほど遠い状態でも、試合を形づくる。これまでと違う姿が成長の証しといえる。
プロ8年目 キャンプでの〝がむしゃら〟が結実
ドラフト1位で入団して8年目。自らの立ち位置を客観的に見つめ、勝負のシーズンに臨んだ。並々ならぬ決意は、沖縄・春季キャンプ序盤の行動に表れた。第1クール4日目。上原は予定されていたライブBP(実戦形式の打撃練習)を、突如回避した。キャンプ初日の紅白戦で想定を上回る球数(約30球)を投げたこと。さらに2、3日目もブルペン入りしたことが影響し、チームからストップを掛けられていた。
「僕は4連投するつもりだったんですけど、朝になってトレーナーから止められました。キャッチボールやバッティング練習も止められたので、やることがなくて(笑)。シャドーばっかりやってました」。オーバーワークを指摘されるほどの頑張りが今、結果につながった。
新庄監督も気迫の投球を評価「『今日が最後』っていう気持ちがつながった」
粘りの投球を見届けた新庄監督は「前回と同じ失敗をしたら、もう投げさせないって言いました。本人の『今日が最後』っていう気持ちが投球につながった。同点の場面では、もう一回いかせるっていうのを決めてたんですけど(六回に)1点入ったので、勝ちを上原くんに付けたくて代えました」と、左腕の気迫あふれる投球を評価した。誰もが認める潜在能力を持つ男が、信頼を一つ積み上げた。