ファイターズ
≪岩本勉のガン流F論≫佑よ感謝の涙忘れないでほしい
出せるものは全て出し切った。斎藤の表情は晴れ晴れとしていたし、吹っ切れていた。プロではつらい時間ばかりだった。10年間、「今年こそは」と言い続けていた。周りの期待は大きく、しんどかっただろう。この日は重圧から解放され、彼らしい笑顔が見られた。すがすがしかった。
同じ背番号を付けた縁もあり、思い入れのある投手だった。けがを抱えながら、普通の選手の何倍も努力して、小柄な体で戦ってきた。無難な野球人生などあり得ない。苦難、困難を乗り越えた経験は必ず「有り難し」として返ってくる。ファイターズの仲間の姿を見て、そう再確認できたはずだ。
彼の両親が「一度も弱音を吐かず、野球に背を向けなかった」と話していた。並みの選手ならもっと早く音を上げて、野球をやめてもおかしくなかった。
最後にベンチで栗山監督から背中を叩かれ、流した感謝の涙を忘れないでほしい。その心があれば、野球界に恩返しができる。ステージが変わっても野球人としての歩みは変わらない。これから、その歩みを一層強くしてもらいたい。(本紙評論家)