新庄監督 秘策発動 上川畑おとりに万波生還で決勝点
■交流戦1回戦 日本ハム2-1中日(6月16日、バンテリンドームナゴヤ)
四回2死一、三塁 緊迫した場面で奇襲はまり勝ち越し 連敗は3でストップ
球場全体を欺いた。日本ハムの新庄剛志監督(51)が16日、バンテリンドームで行われた中日戦の四回、秘策を繰り出した。同点の2死一、三塁で、投手の一塁けん制を誘ってホームスチールを敢行。緊迫した場面の奇襲が完璧な形で成功し、決勝点をもぎ取った。頭脳を駆使して連敗を3で止めた。
監督就任1年目の昨季、時には勝ち負けさえも度外視し、多彩な戦術を試してきた。一、三塁は最も得意な形だった。相手の心理の裏をかくようなトリックプレーで勝ち越し、新庄監督は「去年からね、やってきたことを1発で…。あのタイミングじゃないとちょっと難しいというところを決めてくれた。成長に、もう感謝しかないですね」と、選手を手放しで褒めた。
相手が投球動作に入る前に三走が走りだし 続いて一走飛び出し 左腕は反射的にけん制
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ひっそりと出されたベンチのサインに呼応し、走者が連動した。マウンドには中日左腕の小笠原。投球動作に入る前に三走・万波が本塁へ走りだし、続いて一走・上川畑が飛び出した。一走が視界に入る小笠原は反射的に、けん制。一塁手が捕球した時点で、万波は本塁手前まで到達していた。
勝ち越し点が入った後、挟まれた上川畑がアウトになるのは織り込み済みだった。チェンジになっても、スタンドは騒然としていた。わなにはまった中日の立浪監督は、ベンチで首をひねり、落胆の色を隠せなかった。相手に与えたダメージは点差以上に甚大だった。
新庄監督「1点は何とか取りたかった。ない頭を振り絞って点を取らせるのが僕の役目」
新庄監督は序盤でロースコアの投手戦をイメージしていた。次の1点が重くなると見て、機を狙っていた。「1点はなんとか取りたかった。あそこで、ない頭を振り絞って、点取らせるのが僕の役目なので」
おとり役の一走・上川畑「(けん制を)投げてきた瞬間、うまくいったな」
塁上の走者も指揮官の思考を読み、備えていた。けん制を投げさせるための演技力が求められた上川畑は「いかにも走ったように見せるのが大事かなと。飛び出すサインだったので、(けん制を)投げてきた瞬間、うまくいったなという感覚はありました」と冷静におとり役を遂行した。
本塁へ生還した三走・万波「最高の形になった。(サインに)驚かなくなってきました」
絶好のスタートを切り、本塁に突入した万波は「タイミング測りながら準備して、最高の形になったなと思います。もう(失敗しても)ベンチのせいだと思っていきました」と笑顔で回想。昨季、定石にとらわれないさまざまな策を実践したことで、余裕が生まれ「驚かなくなってきましたし、ここでこれ(予測しないサイン)が出るのか―という場面は減ってきたような気がします」と胸を張った。
決して、いちかばちかの賭けではなかった。打ち続けてきた布石の一つが、実った。経験に裏打ちされたビッグプレーに、新庄野球の可能性が詰まっていた。
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