上沢直之の連載手記『You only live once』第3回 エース右腕がピッチングバイブルを大公開!
日本ハム・上沢直之投手(29)の連載手記『You only live once』(人生は一度きり)第3回は〝七色の変化球〟を操る右腕が「ピッチングバイブル」を大公開。元同僚で米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平投手(28)も一目置いていたチーム屈指の変化球の使い手が、投球の極意を余すことなく明かしてくれました。
(※連載手記『You only live once』は、北海道新聞の紙面でも要約版がお読みいただけます。今回は6月23日付の新聞に掲載しています)
変化球向きの大きな手 伊藤とも頻繁に談義
変化球を覚えるのは得意な方でした。僕は手が大きいのも、メリットだと思います。他の選手の変化球を見るのも好き。(伊藤)大海とはよく変化球の話をします。それこそ、僕が野球を始めた頃は動画投稿サイト「ユーチューブ」がはやり始めたくらいで、画質が荒いピッチング映像を止めながら見てました。
まずはカーブを習得 高校時代にはスライダーやチェンジアップも
最初に習得したのはカーブ。中学1、2年の頃かな。練習や学校が終わった後、友達に付き合ってもらって近くの公園で練習していました。ダルビッシュ(有)さんら、いろいろな選手の書籍「変化球バイブル」を何冊か持ってました。
中学の時は、真っすぐ、カーブしかなかった。スライダーはいまいち投げ方が分からなくて。(専大松戸)高校で(持丸)監督に投げ方を教えてもらって、徐々に投げられるようになりました。真横にブーンという感じよりは、カーブよりは斜めに曲がっていくみたいなイメージです。高校の時は、フォークとチェンジアップも覚えました。理由は空振りを取りたいとかだったはずです。
難儀したカットの習得 プロで有効性を実感
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今、キャッチャーのサインは直球、カーブ、ナックルカーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ、フォークの7つです。手数が多い方がいいし、球種はあるに越したことないなって、2018年くらいから増やしました。
習得に時間がかかったのは、18年に覚えたカットボールかな。プロに入ってから、木のバットの芯を外す重要性を僕も見ながら感じていました。スライダーみたいに曲がったら駄目だし、ちょっと小さく曲げるのがどうしても分からなかった。ブルペンやキャッチボールで投げていたら、ある日突然、投げられるようになりました。
いい打者ほど、出だしは直球に見せることが大事。カットを直球だと思って打ちにいき、そこから小さく動くので詰まらせたりできるんです。高校で使う金属バットは少し芯を外してもヒットになる。だから高校生はカットがあまり必要ないのだと思います。
スラッターも駆使 6月8日の広島戦で披露
スライダーとカットの中間の変化をする「スラッター」は、カットのサインで投げたりします。スラッターとカットは球速がかけ離れてないのでキャッチャーも捕れるだろうと。事前に、自分で考えて投げ分けると伝えています。最近では(6月8日の)広島戦で菊池選手に1球だけ投げました。
バリエーション豊富なフォーク 投げ分けが可能
フォークも数種類投げ分けています。春季キャンプから練習していた落差が大きいフォークがあるのですが、試合で多投できなかった。もともと投げていたスピン量が多くて、小っちゃく落ちるスプリット系のフォークに戻しました。
チェンジアップは尊敬する金子コーチ譲り
今のチェンジアップはネコさん(金子千尋特命コーチ)に教わりました。ボールを2本の指(中指と薬指)で握り、直球を投げる感じです。もともと僕のチェンジはシンカー気味に落ちる軌道。ネコさん直伝は、変化せず球速が遅いだけなんです。衝撃でしたよ。大事なのは打者にいかに直球だと思わせるか。そして勇気を持って投げられるかです。
2種類のカーブ ロドリゲス直伝のナックルカーブが主流
カーブは2種類。最近は投げる機会が少ないパワーカーブと、ロド(リゲス)に教えてもらったナックルカーブです。ただ、投げたくても投げられない変化球はあります。腕を上から振る僕は、横曲がりのスライダーは(腕が横振りになりがちなため)難しいですね。
大海のスライダーはいいなって思いますけど、僕には無理かな。(大谷)翔平が投げるスライダーの一種、横に大きく曲がる「スイーパー」も投げられない。翔平は、腕が僕より下位置から出るので実現できる球だと思います。
遊びから身に付く変化球 マネも大切な練習法
変化球はキャッチボールなどで、遊びで投げることが大切。僕には向いていないと早めに諦める人が多いけれど、試合じゃなくても、キャッチボール、ブルペンとかで投げてみたらいい。「ユーチューブ」などで、他の選手のボールのマネをすることも大事だと思います。