古川 けがから復帰後2軍戦で初アーチ 〝あのミス〟を糧に「取り返すしかない」
■イースタン・リーグ14回戦 ロッテ8-4日本ハム(6月29日、鎌ケ谷スタジアム)
左太もも裏肉離れから復帰後初のフル出場で5号2ラン
汚名返上へ、のろしの一発を打ち上げた。左太もも裏肉離れからの完全復活を目指す日本ハムの古川裕大捕手(25)が29日、2軍ロッテ戦に「5番・捕手」で先発し、復帰後初のフル出場を果たした。四回の第2打席で、右翼へ約2カ月ぶりの本塁打となる5号2ランをマーク。「打ったのはカーブで、狙っていなかったんですけど、うまく反応して打てた。打てたことも良かったですけど、まずはやっとフルで出ることができたので、少しホッとしました」と笑顔を見せた。
5月6日1軍楽天戦でけがから凡ミス 新庄監督から「あんなミスをしていたら勝てない」
振り返れば、悪夢のような一日だった。5日6日、エスコンフィールドで行われた楽天戦。1点を追う三回2死から代打で出場した古川は、右翼線への二塁打を放った。しかし、二塁到達前に肉離れを発症。「野球人生で初めてのけが」だった。次打者の松本剛が左前に運ぶも、「頭が真っ白でした」。2死であることを失念し、打球を確認してからスタートを切ったため、本来同点となるはずだった得点を奪えず。痛恨のボーンヘッドに新庄監督は「あんなミスをしていたら勝てない」と雷を落とし、翌日には2軍降格となった。
試合後、打点消した松本剛に謝罪も「また頑張って上がってこいよ」と逆に激励され
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1軍の舞台で、けががミスの言い訳にならないことは、当然理解している。だからこそ、どうしても謝罪しなければいけない人がいた。試合後、その日のうちに電話をかけた相手は、打点を消すことになってしまった松本剛。「すみませんでしたと謝りました。打点は剛さんの成績に関わってくるので、本当に申し訳ないなって思っていました」と、心から謝った。
松本剛はあの日、報道陣に対し「あのミスに関しては許されるべきではないと思う」とコメントしていたが、古川個人にではなく、チーム全体に向けた戒めとしての言葉だった。古川は電話越しでも直接、その意図を伝えられていた。「ああいうコメントを言ったけど、お前一人に言っているわけではないからと。ただ、ああいうプレーは信頼もなくなるし、バッティングを買われているからこそ、そういうことをしているともったいないよ、ということも言ってもらった。最後には、また頑張って上がってこいよって。いい人です」と、厳しくも温かい言葉をかけてくれた先輩に感謝している。
周囲の励ましで徐々にメンタルを立て直し 挽回のチャンスつかむ闘志へ
もちろん、数日間はどうしようもないほど落ち込んだ。「本を読もうとしたんですけど、全然入ってこなくて。一人でいるといろいろ考えてしまって…」。簡単に気持ちを切り替えることはできなかったが、高橋担当スカウトや高校時代の友人など、多くの人から励ましの言葉をもらい、徐々に心を立て直した。
チームに迷惑をかけ、ファンを失望させたことは自覚している。今は、挽回のチャンスをつかむために必死だ。負傷前から体の重さを感じていたこともあり、リハビリ期間中は自炊で食事管理を徹底した。「体の状態が去年の方が良くて、なんか走っていて重いなっていうのがあった。減量じゃないけど、食事を見直して、サプリメントとかもとって。基本は納豆、ゆで卵、サラダ、パスタ。タンパク質を多めにとって、脂質はカットして、糖質はちゃんと摂る。パスタの味付けは塩と少しのごま油だけ。けがもあったので酒も控えていた。そしたら最近は動きが良くなってきた」。体のコンディションが整い、打撃の状態も上向きだ。
信頼回復への道のりは、長く険しくなるかもしれない。それでも「体も心も、今はもう大丈夫。やってしまったことは変えられないので、取り返すしかない。これから、チームにチャンスが来たときに貢献できるように、頑張るだけです」と力を込めた。反省はいやというほどした。〝あのミス〟を糧に、大きく成長してみせる。