思案を巡らせた中断20時間 札幌支部初の継続試合は石狩翔陽に軍配【南大会札幌】
■全国高校野球選手権南北海道大会札幌支部(29、30日、札幌円山)
▽Bブロック準決勝 石狩翔陽2―1札幌新陽
九回裏1死一、二塁からの再開
わずか5球だったが、両者の思惑が入り交じる幕切れだった。29日に行われた石狩翔陽―札幌新陽は降雨のため継続試合となり、九回裏1死一、二塁から再開した。石狩翔陽の井上幸明投手(3年)が、札幌新陽の2番・中塚心翔一塁手(2年)を遊ゴロ併殺打に打ち取り、2日がかりの完投勝利を挙げた。
一打出れば逆転サヨナラの場面
29日午後5時9分に中断となった試合は、約20時間後の30日午後1時5分に始まった。2―1と石狩翔陽1点リードの拮抗した中で、札幌新陽に一打が出れば逆転サヨナラの場面。一夜空いたことで、逃げ切りを図る守備側、逆転を狙う攻撃側ともに再開後の展開を熟考していた。
両チーム共に眠れない一夜
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1点リードの石狩翔陽の正捕手を務める宮川竜憧主将(3年)は「昨日の夜から考えすぎて寝られない状態だった」。あらゆる面から配球のパターンを構築し、三振を奪いにいくのか、それとも併殺で一気に試合終了を狙うのか。井上投手と試合再開ギリギリまでコミュニケーションを重ね「ツーシームで遊ゴロ」と意見を一致させた。迎える札幌新陽の中塚が前日に当たっていなかったこともあり、井上投手は「全球ツーシームで行こう」と腹をくくった。
石狩翔陽バッテリーに託した思い
前日125球の熱投により肩肘は張っていた。再開後は2球連続で外角に外れた。それでも学校の友人からの「頑張ってね」という激励のメッセージやチームメートのマッサージにより「ちょっと肩肘は軽くなった」と皆の思いを右腕に込めた。バッテリーで共有させた思いを変えることはなかった。カウント2―2から外角低めきっちりにツーシームを投げ込み、狙い通り遊ゴロを打たせて併殺を完成させた。
札幌新陽監督「夢の中でもずっと同じシチュエーション」
一方、札幌新陽の小崎達也監督(34)も逆転への道筋を照らすために思考を巡らせた。難しい局面だった。1点を追っての九回。相手投手が降雨で制球を乱しており、ムードも高まっていたところだった。現に井上投手も「あのまま行ったら7:3ぐらいであっちに流れていた」と札幌新陽の重圧も感じていた。この勢いを削ぐことなく再開できるかが焦点だった。「眠れなかったです。夢の中でもずっと同じシチュエーションが出てきました」と指揮官。そして夜が明けた頃に「最後は選手を信じる」と決断した。しかし、結果は裏目となり「勢いに乗せて上げられなかった」と肩を落とした。
プロ注目投手に投げ勝った井上投手「自信になる」
以前までなら降雨コールドで決着していた試合。この日は1プレー、わずか2分で決着したが、見応えのある攻防だった。プロ注目の好投手・札幌新陽の細野龍之介投手(3年)に投げ勝った井上投手は「自信になる」と胸を張った。札幌新陽の悔しい思いも背負って1989年大会以来の全道大会進出を目指す。