名寄支部悲願の甲子園へ 士別翔雲が北大会初白星でエスコンF行き王手【北北海道大会】
■全国高校野球選手権北北海道大会第2日(7月14日、旭川スタルヒン球場)
▽1回戦 士別翔雲8-1足寄(七回コールドゲーム)
学校統合、創部17年目
創部17年目の士別翔雲が、北大会4度目の挑戦で初勝利(20年独自大会を除く)。2013年に就任した渡辺雄介監督(41)は07年統合前の士別OB。学籍は引き継いでいないものの母校としての思いは強く「先輩たちが頑張ってくれてたんで。全校応援は今日来れなかったんで、学校でもパブリックビューイングみたいな感じで見てくださってますし市役所でも映像を流してくださってる。普段からたくさん支えてもらってるのですごくうれしいです」。言葉を詰まらせ目頭を熱くした。
渡辺監督「出来過ぎなぐらいの攻撃でした」
支部3試合連続逆転勝ちで乗り込んできたが、北大会初戦は逃げ切りで勝利をつかんだ。打線は4番の須藤伊吹一塁手(3年)に安打こそなかったが五回に犠飛で1打点。残り8人で13安打と打線全体で投手陣をもり立てた。指揮官は「コールドはちょっと想定してなかったんで、われわれとしては出来過ぎなぐらいの攻撃でしたね」と会心の試合運びに笑みを浮かべた。
22年秋、長崎清峰に押しかけ視察
丸太トレによる下半身強化が強力打線を支えている。22年秋、渡辺監督が09年選抜甲子園を長崎勢として初制覇した長崎清峰に「押しかけ視察」。同校名物のトレーニングを学びオフの練習に導入。短く切断した丸太を両手で抱え、スクワットやポール間を走ったりすることで強力打線の礎となった。
「9番・二塁」佐藤が大活躍
部員数はマネジャーを含めて31人。3年生は一番少ない7人でスタメン中わずかに5人。その中の9番・佐藤優吾二塁手が2安打1打点3盗塁。きらり光る小技を随所に見せ、大舞台で躍動した。渡辺監督は「非常にいい動きだった。体が小さいんで、すごい苦労があったんですけど、自分の良さをグラウンド上で表現してくれた」と目を細めた。
二回にスクイズ
まずは二回1死満塁。佐藤は「(7番の)上野キャプテンが、バントをフライに上げてしまってて『逆に俺は落ち着いてやろう』と。ボール球だったけど落ち着いてできたので良かった」。初球で三塁線にスクイズを成功。主導権を握った。
六回に盗塁
佐藤の勢いは止まらない。四回の2打席目で初安打をマークすると、チームトップクラスの俊足をいかしてすかさず盗塁。3点リードの六回の第3打席では、先頭で安打を放つと再び盗塁を成功させ無死二塁。次打者の四球の時に飛び出して二、三塁間で挟まれたが、送球が左腕に当たり「めちゃくちゃラッキーでした」と無死一、三塁へ好機が広がった。
さらに重盗でホーム生還
ここで二塁手としての佐藤の〝目〟が生きた。「セカンドが後ろに守っていたのは見えていたんで、そこで投げたら行こうと思っていた」。0-1からの2球目、指揮官は「サインは出していない」と言う、ベンチもびっくりのダブルスチールを成功させ、佐藤が生還。高校入学後に渡辺監督から「背が二塁っぽい」と、ほぼ無経験のポジションに転向。普段から守備練習で同じケースをどう防ぐか繰り返してきたことで「違いに気づけた」と、さらにリードを広げることに成功した。
3季通じて初の4強入りへ
準決勝の舞台、エスコンフィールド北海道行きに王手をかけた。3季通じて初の4強入りもかかっている。16日の2回戦・武修館戦へ「エスコンはもちろん行きたいけど、目の前の試合に集中する。まずはしっかり勝ち切って、勝った後にエスコンの喜びをかみしめたい」。名寄支部悲願の甲子園へ、士別翔雲が勢いに乗る。