札幌 大塚俊介フィジカルコーチ 「ミシャさんとつくり上げてきた」研究発表で優秀表彰
日本トレーニング指導学会大会一般の部
北海道コンサドーレ札幌の大塚俊介フィジカルコーチ(41)が、第11回日本トレーニング指導学会大会の一般の部で優秀研究表彰を受賞した。
テーマ『サッカー選手におけるトレーニング計画と評価について』
大塚コーチは北広島市出身で2015年から札幌のフィジカルコーチを務めている。昨年12月に行われた同大会で『サッカー選手におけるトレーニング計画と評価について』とのテーマで発表を行った。「去年はW杯のため早くシーズンが終わって少し時間もできたので、今まで採ったデータを整理したり、実際にシーズン中に使っているトレーニング計画や評価に使っていたものを発表しようと思いついて」と準備を始めたという。大学教授や大学院生の発表が主の大会で、Jリーグチームのフィジカルコーチ初となる優秀研究表彰を受賞することとなった。
試合に向けての1週間で体にかける強度の波をつくる
21年、22年の2シーズン分のデータをまとめて行った研究発表。「トレーニング計画を立てるのに、1週間で(強度の)波をつくっていくんですけど、ずっと高い強度だったら試合で体が重くなる。逆にずっと軽いトレーニングでも今度は体が動かなくなる現象があるので、強度を上げて落としてという波をつくる。その指数の評価から『今日はこういうトレーニングをやった方がいいよね』とか『今日はこのトレーニングを抜いて、こうした方がいいんじゃないか』と構築していく。体の負荷をかけるバランスをとっているようなシステム」と概要を説明する。
「こういう活動を通して全体のレベルを上げていきたい」
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研究発表で画期的だったのは、対象データをJ1という日本サッカー界の頂点で戦うトップアスリートたちから採ることができたことだ。「(後世に役立つことは)間違いないと思います。なので、僕もずっと継続的にやっていかなければならない作業だと思っています。こういう活動を通して全体のレベルを上げていきたいなと。コンサドーレもそうだし、大きいことを言うと日本のサッカーがこういう科学的なことも含めて、現場ではこういうレベルでやっているというのを伝えていきたいです」。フィジカルの側面から日本サッカー界のレベルアップに貢献する意識を持って研究を継続していくつもりだ。
クラブからも社会貢献になると後押し
そんな大塚コーチの活動をクラブも強く後押ししている。「クラブにデータを使って発表したいことを伝えたら、了承してくれて。コンサドーレは研究発表することによってデータを世の中の人に開示することも、一つの社会貢献だと思って受け入れてくれる。それを認めているクラブというのも多分なかなか無いと思います」と感謝を口にする。
日本中のサッカーファンがミシャの志向に興味ある
研究発表を行う動機となったのは18年から札幌の監督を務めているミハイロ・ペトロヴィッチ監督(65)の存在だ。「日本中のサッカーファンが、ミシャさんのトレーニングであったり、どういうことを考えているのかに興味があると思うんですよね。その中で何かを今後に残していく意味でも、ミシャさんとつくり上げてきたトレーニング計画と評価で受賞できたのはすごい栄誉あることだなと思っています」。
試合後の監督コメントを参考に
発表のために資料をまとめていた中で気づかされたのが、指揮官の選手コンディションを見極める慧眼の高さだ。「ミシャさんが(試合後の監督会見で語る)試合の内容で『今日はすごく選手の出足が良かった』とか『相手よりも走って』『長い距離をスプリントして』っていうフィットネスに関わるコメントを抜いてきたら、その波をつくれたときが合致したんです。どうやって選手のフィットネスを評価するかとなったときに、監督のコメントだなと思って。ミシャさんが『今日は走れなかった』とか『今日は戦えなかった』と言うコメントをしたときを抜粋していくと、そう言うときは波がつくれていない。これは面白いと思って学会で発表したら、そういう評価をする人ってなかなかいないからすごく評価してくれて」。
数値化できないものと掛け合わせて行くことが大事
一方で「どのタイミングで波を出すとか、どのタイミングで落とすかは、やはり監督とかフィジカルコーチの力量というか、その肌感覚。例えば選手の表情とかは数字では表せられないから、そういうのも加味しなければならない。その選択は間違いなく数値化できないので(科学的な数値と)掛け合わせていくことが大事だなと、いつも思っています。科学的なものにまとめようとした結果、科学だけでは致れないところもある」と数値だけが全てではないとも語る。巻き返しを図る中断明けに向けて、チームのコンディションをどのように上げていくのか。その手腕にも注目だ。