クラーク新岡歩輝2日間計302球の熱投 春夏連続甲子園へ「負けるわけにはいかなかった」【北北海道大会】
■全国高校野球選手権北北海道大会最終日(7月23日、エスコンフィールド北海道)
▽決勝 クラーク1-0旭川明成
クラーク7年ぶり夏の甲子園へ
大黒柱が7年ぶり夏の甲子園に導いた。クラークは先発の新岡歩輝主将(3年)が9回5安打無失点と貫禄の投球を見せ、初優勝を狙った旭川明成を退けた。2日間で300球超えの熱投に、佐々木啓司監督(67)も「新岡がよく投げてくれました。まだ伸びしろがあると感じた」と称賛した。春夏連続甲子園に導いた背番号1が聖地でも躍動する。
最後は10個目の三振で締めた
エスコンのマウンドを支配した302球だった―。1点リードの九回2死二、三塁で迎えたのは旭川明成の左打者、植木玲陽遊撃手(3年)。カウントは1-2、前の球ではプレートの三塁側に足を掛けていたが、最後は一塁側を選んだ。チェンジアップを外角低めに落とし10個目の奪三振。右拳を力強く握った。「負けるわけにはいかなかった。三振で終われたのが一番うれしい」。
変幻自在に球を操り、旭川明成打線をシャットアウトした。1点あれば十分、そう思わせる投球内容だった。前日22日の白樺学園戦ではタイブレークにもつれこむ熱戦で、延長十回を投げ切り172球投じていた。当然疲れが心配されたが、序盤3イニングを完璧に封じ不安の種を一掃した。
エスコンの硬くて高いマウンドがフィット
散発5安打無四球の完封劇。この日最速143キロを記録した球威、内外角に投げ分ける制球力、そして投球テンポも申し分なかった。プロ仕様の硬くて高いマウンドが思った以上にフィットした。「本当に投げやすかったです。自分に合ったマウンドだった」とバランス良く投げられたからこそ、球数がかさんでも投球フォームが崩れることはなかった。1球ごとにプレートの踏む位置を変え、時には下手から投じるなど相手打者を幻惑し続けた。「硬いマウンドだからこそプレートの位置を変えられた。掘れるマウンドだと体重のバランスを崩したりする」と、エスコンのマウンドとの相乗効果は予想以上のものだった。
選抜甲子園は沖縄尚学に3失点完投負け
幾多もの壁が立ちはだかった。選抜甲子園では沖縄尚学に1-3で敗戦。3失点完投と意地を見せた新岡は「もっと強くなって夏に戻ってくる」と誓いを立てた。しかし、選抜から帰ってくると、体調不良に陥るなどコンディションの優れない状態が続いた。春季全道大会に入っても本調子にはほど遠く「まだ完全に治っている感じではないです」と表情は浮かなかった。
幾多の困難も主将として前を向き続け
さらに、春季全道大会直前には、打線の中軸を担っていた坂本劣陽(3年)が練習中に右足を骨折。佐々木達也部長(39)も部内の体罰、暴言と報告義務違反により20日まで謹慎処分が下されるなどチームは揺れた。それでも、主将として下を向くわけにはいかなかった。「全員で前を向いてやるしかなかった。気持ちはぶれることはなかったです。坂本にもいい思いをさせてやりたいっていう気持ちは本当に強くなった」。自らの練習を後回しにしノッカー役を務めるなど、精力的にチームの支えとなった。
「本当に苦しかった。自分にとっても困難だった」
険しい道のりを乗り越えてたどり着いた頂点。「本当に苦しかった。自分にとっても困難だった」と安堵の表情を見せた。次なる舞台は自身初となる夏の甲子園だ。「甲子園が自分を成長させてくれた。まずはみんなを勝たせたい。1勝を届けたいです」。聖地での〝恩返し〟に向けて新岡が再始動する。