旭川明成エース千葉隆広 遠かったホームベース、目前だった初甲子園【北北海道大会】
■全国高校野球選手権北北海道大会最終日(7月23日、エスコンフィールド北海道)
▽決勝 クラーク1-0旭川明成
九回裏2死二、三塁、逆転サヨナラの場面
ホームベースがこれほど遠いものなのか。孤軍奮闘する旭川明成のエース千葉隆広(3年)は試合終了を三塁塁上で迎えた。九回裏2死二、三塁の場面。自分が生還すれば同点、二走の小野寺謙真右翼手(3年)が還れば逆転サヨナラで同校初の甲子園出場の夢が叶うはずだった。しかし、夢にはあと一歩届かなかった。
新岡投手から3安打
バットでも最後まで諦めなかった。2打席連続安打で迎えた九回1死。この試合自身3本目の安打を放ち、敵失が絡み2死ながら初めて三塁に進んだ。一打逆転サヨナラを期待したが、最後は6番・植木玲陽遊撃手(3年)が三振に倒れゲームセットとなった。「今までの思いとか、やってきたことが一気に頭によみがえってきた」。マウンドに駆け寄るクラークナインを横目に、千葉は左手にヘルメットをつかみ、重い足取りで整列へと向かった。
1失点完投も五回に唯一の失点
1失点完投も涙を飲んだ。0-0の五回2死二塁で甘く入ったカットボールを右前に運ばれ先制点。これが最後まで重くのしかかった。スタンドへのあいさつが終わるとナインはその場に泣き崩れた。1年春から登板してきた左腕エースは「少し高めの浮いて、力のない感じの球になってしまった」と唯一の失点を悔やんだ。クラークの新岡歩輝投手(3年)とは2年秋の全道2回戦でも共に完投し1-3で敗戦。再び大きな壁となって立ちはだかった。
中学時代の仲間と目指した甲子園
3年越しの夢へあとわずかだった。中学卒業時、旭川北稜シニアの仲間と「まだ甲子園に行っていない学校で勝負したい」と、父・広規監督(46)が指導する旭川明成に進み、1年春からマウンドに上がってきた。圧倒的な実力がなければ陰で非難されるような難しい立場だったが、千葉投手は1年秋から6季連続で道大会に出場。結果でエースナンバーがふさわしいことを示し続けてきた。
クラーク戦では、ベンチ入り20人中6人が同シニア出身。実に足かけ6年間共にプレーしてきた強い絆が強さの源だった。「このメンバーできょうまでやってこれて、最後、あと一歩のところで負けてしまったけど、ここまでやって来たことは間違っていなかった。このメンバーで野球が出来てうれしかったです」。自分を信じてついてきてくれたナインに感謝した。
プロ志望届提出の方針
旭川明成の歩みは止まらない。創部26年目。「伝統はこれから始まる」と指揮官。明日から普通の父と子に戻る千葉投手も「自分たちが見せてきた技術以外の行動とか試合中の態度とか、野球以外の伝統を引き継いでいって。自分も練習に行くので、これからも強い旭川明成を作っていければ」。千葉投手はプロ志望届提出の方針だ。3年生の悔し涙を間近で見た新チームが全ての思いを受け止め、届かなかったあと1点を追い求め、再び立ち上がることを信じている。