高校野球
2023/07/24 22:00

北海・熊谷陽輝が3戦連発&エスコンF初アーチ 夏の全国最多40度目の甲子園へ王手【南北海道大会】

三回2死、北海の熊谷一塁手はバックスクリーンへ3試合連続となる本塁打を放つ(撮影・宮永春希)

■全国高校野球選手権南北海道大会第5日(7月24日、エスコンフィールド北海道)
▽準決勝 北海7-2駒大苫小牧

3季連続の決勝進出

 北海が終盤の猛攻で駒大苫小牧を突き放し、3季連続で道大会決勝に進出した。4番・熊谷陽輝一塁手(3年)が同点に追い付かれた直後の三回に、エスコンFのバックスクリーンに3試合連続となる公式戦第10号アーチを放つなど3安打3打点。投げても春先の右肘負傷後、最速となる144キロをマークし、3回1失点と元エースの完全復活が見えてきた。北海が新チーム始動後、秋春夏の3季連続で道大会決勝に進出するのは8年ぶり7度目。決勝は夏の全国最多40度目の甲子園をかけ、春季全道で勝利した北海道栄と対戦する。

直球一本狙い「まっすぐじゃなかったらもう諦めよう」

 2死走者なし、フルカウントからの6球目。熊谷の狙いは直球一本。「まっすぐじゃなかったらもう諦めようって。まっすぐは絶対対応できる自信はある」。見逃せば四球かという高めのボール球だったが、打った瞬間分かる驚異の放物線に、平日にもかかわらずエスコンフィールドに集まった1万3877人の大観衆の視線がくぎ付けとなった。

右手を突き上げたままダイヤモンド一周

 宣言通りのエスコン初アーチだ。熊谷は7月19日に札幌円山で行われた2回戦・立命館慶祥戦で右方向へ2戦連発弾。試合後「エスコンで第1号を打ちたい」と意欲を見せていた。3試合連続の一発に「あの時は右手の押し込みが足りなかったけど、今日はもう完璧。なんか打ったんだなって実感が円山よりちょっと違くて、すごい気持ち良かった」。右手を突き上げたままダイヤモンドを悠々と一周。三塁側の北海ベンチで仲間から手厚い祝福を浴びた。

直後にマウンドへ「流れで託してみようかな」と平川監督

 熊谷の右腕にもようやく本来の球威が戻ってきた。平川敦監督(52)は「1本大きいの打ちまして、その流れで熊谷に託してみようかなと。長内もアップアップな状態だったので、熊谷にかけてみました」と本塁打直後の三回裏からマウンドに送り込んだ。

 駒大苫小牧側の2階席から大音量のブラスバンドが奏でる応援に圧倒されるどころか「もう気持ち入っていたんで、聞こえなかったです」と目の前の打者に全集中。最初の打者に最速まであと2キロに迫る144キロをマーク。その後も、平均140キロ台前半の直球でぐいぐい押し3者凡退。「マウンドの感触は正直、覚えてないです。ピッチャー久しぶりで、今までけがもしていろいろな思いもあって、本気でぶつかりあうしかないって自分の気持ち出していた」。3イニングを投げ終え1点リードした状態で、エース・岡田彗斗投手(3年)にバトンを渡した。
 

監督のアドバイスで復調、フォーム矯正

 復調のきっかけは平川監督のアドバイスだ。公式練習前日の7月22日、「手投げみたいな感じになっていた。体を使って腕がしなるというか、巻きつくというか。腕は振ってはいるけど体使えない状態だったので、体使って腕使ってことはちょっと考えて」。約50センチのフォーム矯正器具やキャッチボールで約30分程度みっちり修正。この日の投球は「5割、6割」。本来の能力はこんなもんじゃないと言わんばかりの辛口評価は期待の裏返しだ。

大石捕手「(肘の)怖さもなくなったからそりゃ腕振れるな」

 マスクをかぶった大石広那捕手(2年)も試合前から熊谷の変化に気づいていた。「昨日ぐらいから肘の違和感も何もなくて、ずっと良い調子で2日間ぐらいいた。いつもは試合で球速が落ちながらみたいな感じだったんですけど、今日は投球練習の時から良くて、戻ってきたなと。多分怖さってのが本人にあったと思いますし、その怖さが試合の中でも出ていた。今日はその感じがあまりなかったので、怖さもなくなったからそりゃ腕振れるな」と先輩右腕の復活に声を弾ませた。

いざ決勝へ「初戦だと思って、いつも通り、そして勝ちたい」

 決勝では再び北海道栄と頂点をかけて戦う。今度は甲子園がかかっているだけに春とは両校とも気迫が違う。熊谷は「去年の秋はここ(決勝)で負けてしまったので、ここからが勝負。明日はもう気合入れて、初戦だと思って、いつも通り、そして勝ちたい」。マウンドに帰ってきた背番号3がチームを頂点に導く。

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