札幌市出身の芸人・マシンガンズ西堀 運命の「THE SECOND」から再ブレーク中【インタビュー前編】
結成25年目 芸人人生の第2章
5月20日に行われた「THE SECOND~漫才トーナメント~」で準優勝を成し遂げたマシンガンズが、結成25年目で再ブレークを果たしている。札幌市出身の西堀亮(48)に「THE SECOND」の裏側や、これまでの芸人人生、発明学会員としての一面、そして地元・北海道についてなど、多岐にわたって話を聞いた。全2回の前編では運命の「5・20」当日の話と再注目されている現状を語ってくれた。
サボリから生まれたアドリブ力
―「THE SECOND」準優勝おめでとうございます。
「ありがとうございます。5月20日で人生が変わりました」
―雑談を始めてから、ネタに入っていたのが印象的だった。これまでの営業の賜物か
「あれはサボっていた賜物なんですよね(笑い)。イチから新ネタをやると、ずっと新ネタをやらないといけない。でもああやって、その場のことを言って時間を稼ぐと、ネタ部分のパートが少なくて済むじゃないですか。そういうことばっかりやっていたんですよ、何年も。だから、よくみんなに『アドリブがすごいね』とか言われたりするんですけど、多少そのパターンを普段からやっていたんですよ。別に自分たち的には、やり慣れているというか。まさかそれをテレビの生放送でやるとは自分でも思ってませんでしたけど(笑い)」
3本目はネタがなかった
―当日の緊張感は
「緊張しないと思っていたんですけど、1回戦が終わって、胃が痛くて悶絶ですよ。普段だったら大体これで終わるんですよ、1回ネタをやれば。1回戦終わってから2回戦までは『参った、腹痛い』ってやっていたんですけど、3本目はネタがなかったので、他のストレスが出てきて、胃がピタッと痛くなくなって、ネタの方にストレスが行っちゃった。だから、3本目は緊張してないんですよ。あれは学びましたね、大きいストレスの前では小さいストレスってやっぱりなくなっちゃいますね」
―最初は出場する気がなかった
「はい。マネジャーが勝手に応募して、余計なことすんなやって思って(笑い)。結果、どう転ぶか分からないですね。現状、苦しんでいるコンビ同士が決勝で当たって『THE SECOND』の趣旨に一番合っていたと思います」
―どの辺から手応えを感じていた
「ずっと手応えはなかったんですよ。ベスト32でガクテンソクと当たって、勝つのは難しいんじゃないかなって思っていたんですよ。そしたら勝てて。次のランジャタイは去年まで『M-1』にバリバリ出てたし、ここまで来たら立派だよ、と。ここで良かったのは先攻だったんですよ。後攻が完全に有利って言われていたんですけど、あそこまで名前があって、強いチームだと、俺たちみたいな負けている方が先行逃げ切りで、今思うと良かったのかもしれないです。対戦の妙というか。そこで勝って、テレビに出られるぞっていうあたりでも、そんなにプレッシャーは感じてなかったです、まだ。でも5月20日前は(相方の)滝沢も体調悪いとか、俺も体がだるいなとか、意外とプレッシャーあったんですね、今思うと。始まったらすぐですよ」
決勝はステージに立ってもまだ考えてた
―ネタのなかった3本目は、ある意味で伝説となった
「金属バットとの1回戦だけは絶対に勝とうと思っていた。後攻だったし、ここ頑張ろうと思っていたので、プレッシャー掛かっているんですよね。で、次が三四郎。まあ、もういい、と(笑い)。決められたネタも、これやるって決まっているし、三四郎には勝てないなと思って、ネタも2本しかなかったし、ここでいいよって思ってたら、勝っちゃって。ここから決勝までの時間が一番プレッシャーが掛かりました。何をやるんだっていう。ギリギリまで考えてましたよ。これと、これと、これと、って指折って数えて。本番です、って言われて、あそこのステージの真ん中に立っても、まだ考えてました。でも『GO』っていうランプがついたんで行かなきゃいけないから、もうしょうがないって」
―優勝まであと一歩だった。悔しさは
「ないです。やり切りました。でも、最後の発表で1000万円のでっかいパネルが出てきたんですよ。そのときは、あれをもらえてたかもしれないなと思って、ちょっと後悔しました(笑い)。でも、基本的にはないです。上出来も上出来じゃないですか」
やっと神様・松本人志の記憶に残った
―アンバサダーの松本人志に見られている中だった
「プレッシャーもありましたけど、うれしかったですね。何か、やっとこの神様の記憶に入ったというか。番組でもマシンガンズっていうフレーズを出してくれて、やっぱりうれしいものですよ」
―来年「THE SECOND」が開催されたら出場するか
「これからライブとか出てきて、やれるだけのネタがあれば、ですね。ベスト4ぐらいまで行っちゃうと、今までやっていた一番強いネタ2本をやっているんですよね。これが結構、大きくて。いいネタって、たぶん1年間で1本もできないんですよ。だから逆にみんなはどうするのか聞きたいですよね」
―新しいネタを考え始めているか
「ライブがないとやっぱりできないですよね。ライブで考えたネタをやって、ウケなかったら当然、除外されてしまうし。でも、どうなんだろう。ネタがある、ないに関わらず出なきゃいけない気もするんですよね、俺らは。いい思いもさせてもらっているし」
#自撮りおじさんは、おぼつかないのが良かった
―自身のSNSでは「#自撮りおじさん」がバズっている
「あれも『THE SECOND』の余波ですよね。本当にあの日を境に人から見られるようになった。5月19日までは誰も見てなかった(笑い)」
―つくったきっかけは
「自分で写真を撮ってて、俺がタグを作ったら、それがバズって。今は何か番組とかに行くと『自撮りおじさんをやってください』から入っているもんね。たぶん最初はおぼつかないのが良かったんですよ。やったことないから、目線が携帯に行っているとか。それでバズったんじゃないですかね」
相方・滝沢はかっこいいか?!
―相方の滝沢は「ビジュ爆発(ビジュアルが良いの意)」
「そんなこと思ったことなかったから、びっくりしちゃった」
―塩顔で人気に火がついた
「でも確認しましたよ。『あいつ、かっこいいのか?!』って、芸人の中で。(後輩たちも)『分からないんですよ、僕ら』って言ってました。『かっこいいか、あいつ?!』っていう話はよくしました」
―今までも思ったことはない
「ないんですよね。そういう目で滝沢を見たことがないです(笑い)。今日かっこいいなとか、今日かっこ悪いなとか思ったことないんで」
YouTubeでもいろんなことをやってみよう
―コンビでYouTubeチャンネルも始めた
「特にこういう風にやっていこうっていうのはないんですけど、よくあるYouTubeみたいに。今せっかくみんなが注目してくれているから、いろんなことをやってみようっていう時期かもしれないです」
ドキュメンタリー路線で40万回再生
―自身のYouTubeチャンネルでも発信している
「『西堀ウォーカーチャンネル』は最初、散歩のチャンネルにしたかったんですよ。誰かと一緒に歩いたり。例えば山手線を一周したり、そういうことをやろうと思っていたんですよ。でも人が全然見ないんですよ。それで太田プロの後輩に和賀勇介っていう芸人がいて、そいつはお金を持つと全部使っちゃうんですよ。それ面白いなと思ってて、一回、その様子を撮ったら40万回再生とかいったんですよ。これは散歩よりもドキュメンタリーが求められているんだなと思って、ドキュメンタリー路線になっていくわけですよ」
―そちらも定期的に更新していく
「今は滞ってますね。暇だから1日かけて遊んでいる感じなんです。昼間から酒飲んで。だから時間はあった方が撮れますよね」
(つづく)
■プロフィール 西堀亮(にしほり・りょう) 1974年10月4日生まれ、札幌市出身。石狩南高卒業後、お笑い芸人を目指して上京し、相方の滝沢秀一と1998年にマシンガンズを結成した。2003年から太田プロダクションに所属。07、08年「M-1グランプリ」準決勝進出。12年「THE MANZAI」の認定漫才師50組に選ばれる。20年、発明学会「身近なヒント発明展」にて優良賞を受賞。23年「THE SECOND~漫才トーナメント~」グランプリファイナルで準優勝。