《岩本勉のガン流F論》野村が取り戻した「俺のバッティング」
■パ・リーグ14回戦 日本ハム3ー2ロッテ(8月1日、ZOZOマリンスタジアム)
役者が揃えば劇的勝利も可能 九回の2連発で快勝
役者が揃えば、劇的勝利も不可能ではない。1点を追う九回に万波とマルティネスが2者連続本塁打を叩き込んだ。逆転勝利を引き寄せた2人の豪快な一発は目を引く。当然だ。ただ、硬く施錠されたホームベースの扉を最初にこじ開けた野村の一打にも大きな価値と意義があった。
2軍降格も経験 野村が取り戻した持ち味とは
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2点を追う四回1死一、二塁。メルセデスが投じた初球のスライダーを右中間にはじき返した。初球。ここに注目したい。今季、なかなか調子が上がらず、7月中旬には2軍に降格した。そして1軍に復帰して最初の打席が7月28日のオリックス戦。八回に代打で登場した。ここで宇田川の初球を打って三ゴロ。凡打に終わったが、積極的にバットを出す姿に吹っ切れた野村を見た。
結果が伴わなかった時期は積極性を欠いていた。後手後手に回り、迷っているうちに追い込まれ、中途半端なバッティングで凡打を繰り返した。ファームで、どんどんバットを出し、「俺のバッティング」を取り戻したのだろう。それが復帰第1打席、そしてこの日のタイムリーにつながった。
高い技術が詰まった万波&マルティネスの一発
万波とマルティネスの一発には高い技術が詰まっていた。益田が投じるシュート軌道の直球を引っ張らず、センターから右へ持っていった。いずれも見事なバッティングだった。
安定感抜群の加藤貴 気迫を見せたロドリゲス
投手陣の踏ん張りも称賛に値する。先制点を献上したとはいえ、先発の加藤貴は相変わらずの安定感で、ハイクオリティースタート(7回以上を自責点2以内)をマークした。2番手のロドリゲスも走者を出しながら無失点。これまでは、どこか手探りなピッチングが目立っていたが、この日は燃えているように見えた。
クローザーとしてさらなる飛躍を遂げた田中正
そして田中正。自分で招いたピンチとはいえ、久しぶりの緊迫したシチュエーションで抑えきった。2死二、三塁。一打逆転サヨナラのシーンで、山口を空振り三振。3球ストレート勝負で、ねじ伏せた。特にラストの1球。大ざっぱではなく、大胆に渾身の一球を投じた。大事な場面で開き直れたことで、クローザーとしてまた一つ、壁を乗り越えた。