選手がグラウンドに出てきて、ストレッチを開始していた。心なしか、玉井の表情がしんみりしているように見えた。一つ、思い当たる節があった。慕っている〝ボス〟が１軍からいなくなり、寂しいのではないか―。頭に浮かんだ疑問をそのままぶつけてみた。

　兄貴分と言い換えられる宮西が出場選手登録を抹消されて１０日が過ぎていた。イジられることも多かったが、頼れる先輩の存在は大きかったよう。「そうなんですよ。いなくなって気づきました。打たれた時とか、意外と話を聞いてもらっていたんだと。早く戻ってきてもらいたい」と胸の内を明かしてくれた。

　離ればなれになった直後、１度だけ連絡を取ったが、深い話はしていないそう。ただ、スタッフを通じて鎌ケ谷での様子は耳に入ってきており「トレーナーさんに聞いたんですけど、宮さん、めちゃくちゃ走り込んでいるらしい。爆走、爆投げ、爆筋トレしているみたいです」と楽しそうに教えてくれた。

　互いに気に掛け、支え合う素晴らしい師弟関係―と思ったが、やはり美談では終わらなかった。そのトレーナーを介して、最後に宮西からこんな伝言を受け取ったという。「最近、打たれとるやん。タマイ、落ちてこい」。素直になれないツンデレ左腕の縁起でもない毒舌エール。２人の掛け合いを早く、１軍で見たい。