北海V 2年ぶり11度目選手権切符
■全国高校サッカー選手権道大会最終日(24日、札幌厚別公園競技場)
王座奪還だ! 北海が今夏の全道王者・旭実を下し、2年ぶり11度目の優勝を果たした。両チームとも延長戦まで合計100分間、無得点でPK戦に突入。北海は5本全てを決め、途中出場のGK神宮快哉(3年)が4本目に値千金のスーパーセーブを披露し、激闘を制した。大会直前に主力の右ウイングバック・川崎啓史(3年)が左足首を骨折。「啓史を全国に」を合言葉に一致団結し、節目となる100回大会(全国)への出場を決めた。全国大会は12月28日に東京・国立競技場で開幕する。
GK神宮スーパーセーブ
PK5人目のMF長谷川悠翔(3年)がゴール左にシュートを突き刺すと、歓喜に沸くベンチに飛び込んだ。ピッチ中央から駆けつけたメンバーとも抱き合い、喜びを爆発させた。
100分間でシュート数は北海の4本に対して旭実は11本。何度も迎えたピンチを体を張ってはね返し、勝利をたぐり寄せた。島谷制勝監督(52)は「これしかないという勝ち方だった」と感慨深く振り返った。
182センチの大型PK職人が仕事をやってのけた。延長戦終了直前にピッチに送り込まれたのは夏まで正GKだった神宮。2回戦の札創成戦でも途中出場からPK戦での勝利に貢献。全国がかかった大一番でもビッグセーブで勝利に貢献した。
島谷監督が「例年になく、力がない世代」と表現していた現チーム。指揮官は「最後に負けた時、『やっぱり負けた』という言葉が出るようなことがあってはならない」とメンタル面での成長を求めてきた。
夏の全道初戦(2回戦、北星大付戦)で敗れてからは毎日、3年生を中心にミーティングを繰り返した。時に厳しい言葉を投げつけるなど、叱咤(しった)激励し合い「腹をくくる部分ができた」とGK伊藤麗生主将(3年)。覚悟を持って高校最後の大会へと士気を高めてきた。
さらに一つのアクシデントをきっかけに結束は強固なものになった。札幌支部予選後の9月下旬、川崎が左足を骨折。3年生は「啓史を全国に」と書き込んだガムテープを練習着の胸に貼って練習に取り組んだ。
しかし1週間後、それがうわべだけだと見透かしていた指揮官から、「本音じゃないだろ! 青春ごっこは止めてしまえ」とカミナリを落とされた。この言葉に長谷川は「最初は悔しかったけど、やってやるぞと思った」と発奮。チームの雰囲気は一変した。
5試合で2失点と粘り強い守備で今大会を制した。次は全国。伊藤主将は「ディフェンスでも最後に危ない場面もあった。修正していきたい」。16強入りした83回大会以来17大会ぶりの白星をつかみにいく。(西川薫)
ソフトバンクD3位・木村 恩返し声援
北海の応援スタンドには、プロ野球ドラフト会議でソフトバンクから3位指名された木村大成投手(3年)、巨人育成10位の大津綾也捕手(3年)ら野球部3年生の姿もあった。部室が隣で普段から仲が良い関係。PK戦ではサッカー部員と一緒になって戦況を見守った。木村は「自分たちのことのようにうれしい。(今年の)南大会の決勝にサッカー部が応援に来てくれて、そのおかげで甲子園にも行けた。その恩返しができた」と喜んだ。
旭実 2年連続決勝で悔し涙
昨年に続いて決勝で涙をのんだ。序盤から押し続けながら、北海の強固な守備の前に前半はシュート2本。後半、攻撃の圧力が増したが、最後までゴールを奪うことはできなかった。富居徹雄監督(49)は「こじ開けられなかった。チャンスはあった。決めるところで決められなかった」と肩を落とした。今季はプリンスリーグ北海道で2位。12月には来季のプレミアリーグ参入戦が控えている。「気持ちを切り替えていかないといけない」と力を込めた。