吉田輝星 2軍戦で秋田凱旋 「応援してもらえるか不安でした」
■イースタン・リーグ14回戦 日本ハム4ー5楽天(8月13日、秋田)
4番手登板で1回1安打無失点 大歓声を力に変えた
背番号18がマウンドに向かうと、敵地が一瞬でホームに変わった。秋田出身の日本ハム・吉田輝星投手(22)が13日、2軍楽天戦で〝凱旋登板〟。1球投げるごとに送られる割れんばかりの大歓声を力に変え、1回1安打無失点と好投した。
「すごい歓声をもらって、緊張することもなく、最近の中では一番良いピッチングができました。応援してくれたことに感謝したいですし、すごくうれしかったです」
気温とともに気合も上昇 ピンチも併殺でピシャリ
気温は35℃。「マウンドに上がると暑さは感じないタイプなんですけど、やっぱり寒いより暑い方が『よし、絶対抑えてやるぞ』って気持ちが入る」。灼熱(しゃくねつ)のマウンドで吉田の直球がうなりを上げた。
先頭の沢野への初球は、この日最速の147キロをマーク。拍手の雨が降り、盛り上がりは最高潮に達した。1死後、内野安打と三塁・福田光の失策で一、二塁とピンチを背負ったが、表情は自信満々だ。続く安田を三ゴロ併殺に仕留め、輝星スマイルが弾けた。
よみがえった球威 「本来のスタイルの通りにできた」
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地元の温かい声援に背中を押され、自慢の球威がよみがえった。「最近、変化球はうまくいっていたんですけど、自分本来の真っすぐで押すスタイルがあんまりできていない感じがあった。きょうは逆に、本来の自分のスタイルの通りにできたので、いい収穫になりました。応援してもらった力もあったと思います。エラーもありましたけど、気持ちを切らさずに抑えられたので良かったです」と胸を張った。
思い出のこまちスタジアム 家族や友人、知人も駆け付けた
秋田・こまちスタジアムには、思い出が詰まっている。高3夏には秋田県大会決勝で明桜を完封し、甲子園出場を決めた。昨年は1軍戦で先発し、多くのファンに感動を届けた。「うちわであおいでいる人たちが後ろで見ている景色とか、マウンドから本部席が見えたりとか、壁の色とか、懐かしいなと思いました。自分がプロに入るきっかけ、第一歩はこのこまちで(高3夏に)優勝したこと。すごい思い出深い球場で投げられて良かったです」。また一つ、記憶に残る登板が増えた。
スタンドには父・正樹さん、弟・大輝(金足農高1年)や、友人、知人も大勢集まっていた。「知り合いがいて打たれると、その人も反応しづらいだろうし、僕もちょっと気まずい。僕は知り合いの人が見に来ていて打たれたことないんです。きょうはおやじも来ていて、いい刺激になりました」。お世話になった人たちへの感謝を、プロ野球選手らしくグラウンドで示してみせた。
悔しさが強かった2軍戦での凱旋 期待の声に気持ち新た
2軍の選手として地元で投げることには、抵抗もあった。「去年は1軍の試合で投げさせてもらって、今年はファームの試合。悔しさの方が最初は強かったです。秋田に来られるのはすごいうれしかったんですけど、応援してもらえるのか不安でした」。それでも、秋田のファンの熱い気持ちを肌で感じ「ファームの試合で来ても応援してくれるっていうことがすごいうれしかった。期待しているよっていう声を常にかけてもらったので、そういう人たちにも届くように活躍できたらいい」と決意を新たにした。
まだまだ発展途上の22歳 1軍での活躍期す
3度目の凱旋登板は、1軍の主力投手になって果たすつもりだ。「次は先発として戻って来て、完封、完投で最後までマウンドに立って、勝ち星をつけられるような、いろんな人に何かを感じ取ってもらえるようなピッチングができたらいいなと思います」。応援してくれている全ての人の思いを背負い、理想の投手像に向かって突き進む。