古川 汚名返上の初猛打賞 出塁時は「アウトカウントを選手のみんなが伝えてくれていた」
■パ・リーグ18回戦 ロッテ0-6日本ハム(8月16日、エスコンフィールド北海道)
「9番・捕手」で今季初先発マスク 3安打2打点でヒーローに
汚名返上の躍動だ。日本ハムの古川裕大捕手(25)が16日、ロッテ戦に「9番・捕手」で先発し、プロ初の猛打賞&2打点でヒーローになった。守備では、昨年のノーヒットノーラン達成時にもバッテリーを組んだポンセら、投手陣を好リード。6-0での快勝に大きく貢献した。
決して忘れることのない〝あの日〟
〝あの日〟から3カ月以上が経過した。もちろん、決して忘れることはない。5月6日の楽天戦。1点を追う三回2死から代打で二塁打を放つも、二塁手前で左太もも裏を負傷し「頭の中が真っ白」になった。続く松本剛が左前に運び、本来であれば打った瞬間に全力疾走で本塁を狙うべき場面で、スタートが遅れた。アウトカウントを間違える痛恨のボーンヘッドだった。
翌日に2軍降格を告げられ、しばらくはどん底まで落ち込んだ。「そのミスで去年1年間やってきたことが崩れかけました」。普段は「言葉は現実化する」(永松茂久著)や「生き方」(稲盛和夫著)など、毎日のように本を読む読書家だが、このときばかりは何を読んでも頭に入ってこなかった。「誰かと話している方が楽でした」と、担当の高橋スカウトに自ら電話をかけたこともあった。
「何のために野球をやっているのかなって」
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それでも、野球からは逃げなかった。けがから復帰後は、「ボールを上げに行くんじゃなくて、叩いて上げる意識で練習はやっています」と、昨年から継続している渡辺2軍打撃コーチとのティー打撃で状態を上げた。「ファームにいる期間で、自分を見つめ直すじゃないですけど、何のために野球をやっているのかなって一から考える時間になった。きつかったですけど、いい期間にはなったのかなと思います」と、今はしっかりと前を向いている。
8月15日に再昇格 〝あの日〟と同じ状況も
ようやく巡ってきたチャンスをものにした。15日に再昇格し、この日が今季初スタメン。「ああいうミスをしていたので、何とか取り返したいなって気持ちと、チームに貢献したいなって気持ちがありました」と、第1打席でいきなり適時二塁打を放つと、第2打席でも左前打をマークし、北海道のファンに自慢の打撃力を見せつけた。
六回の第3打席は2死から二塁打で出塁し、続く打者は松本剛。〝あの日〟と同じ状況だったが、同じミスは繰り返さなかった。結果は一邪飛だったが、打球が打ち上がると同時にスタート。「ベンチからもずっと、アウトカウントを選手のみんなが伝えてくれていたので、常に確認していました」とはにかんだ。
打率10割も まだミスは帳消しにできていない
八回の第4打席は犠飛で、試合を決定づける6点目を奪った。3打数3安打2打点で、打率は10割。それでも、まだミスを帳消しにできたとは思っていない。巻き返しへの意気込みを問われた古川は「その気持ちしかないです」と言葉に力を込めた。どん底からはい上がってきた男に、もう怖いものは何もない。