上原 逆転の発想でキャリア最長9回無失点「良いボールを投げる必要はない」
■パ・リーグ19回戦 日本ハム0ー1オリックス(8月20日、京セラドーム大阪)
スコアボードに9つの「0」 封じた先頭打者の出塁
大型左腕が未知の領域に足を踏み入れた。日本ハムの上原健太投手(29)が20日、京セラドームで行われたオリックス戦に先発。キャリア最長の9回を投げ切り、無失点の快投を披露した。打線の援護に恵まれず、勝ち星は得られなかったが「これは大きな経験になりました。これから先につながってくると思います」と手応えを口にし、充実の表情を浮かべた。
プロ入り後最多の116球をテンポ良く投げ抜いた。被安打はわずか4本、与四球も1つだけ。先頭打者の出塁を1度も許さず、淡々とアウトカウントを重ねた。「先頭打者を出すかどうかで、僕の気持ちもだいぶ変わる。どんな形でも先頭を切れば落ち着くことができるので、何としても抑える意識を持っていました」と好投の要因を挙げた。
野球人生初の〝完投〟 プロ8年目で乗り越えた壁
アマチュア時代を含めて9イニングを完投した経験は1度もない。登板後は「九回を投げきるまでに何年かかったんですかね」と自虐的なコメントで報道陣の笑いを誘った。これまでの最長は2020年9月17日・ソフトバンク戦の8回⅓。プロ8年目でようやく、高い壁を乗り越えた。
登板前と立ち上がりは〝不調〟 開き直りが奏功
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終わってみれば、最高の結果を残した。ただ、本人だけは試合前から、一抹の不安を抱えていたという。「きょうはキャッチボールから何とも言えない感じでした。初回も手応えや感覚が良くなくて、どうなることかと思っていた。試合前のコンディションからすると、なんでこんなに投げ切れたんだろう?って感じです」と首をひねった。
ベストとはほど遠い状態を自覚していた。その上で、思い切りよく開き直ったことが好結果につながった。「良いボールを投げる必要はないと考えました。イニングを食うために、ぽんぽんストライクを投げて打ってもらう。そういう意識に切り替えたのが、うまくハマったのかな」。打者のタイミングを外すことに専念し、要所で2段モーションやクイックを駆使。細かな制球は気にせず、ストライクゾーンで大胆に勝負を挑み続けた。
2015年ドラ1左腕 いよいよ覚醒の時
たどり着いた逆転の発想は、左のエース・加藤貴の投球スタイルと重なる。「加藤さんとはタイプが全く違うけど、ストライクが取れるからリズムに乗れてイニングが稼げる。要は、そういうことなんですね。きょうは僕なりに、それができたのかなと思います」。覚醒待たれる背番号20が、新たな境地を切り開いた。