吉田輝星 圧巻の3人斬りで〝開幕〟 復調のきっかけは窓に映った自分の姿
■パ・リーグ18回戦 日本ハム0ー5西武(8月25日、ベルーナドーム)
八回に登板し1回パーフェクト 〝らしさ〟全開で2奪三振
泥にまみれた分だけ、輝きを増して戻って来た。日本ハムの吉田輝星投手(22)が25日、今季1軍初昇格を果たすと、西武戦の八回から即登板。最速149キロの直球で押しまくる〝らしさ全開〟の内容で2三振を奪い、1回を3者凡退に抑えた。
「自分のデータ的にも被打率が一番低いのがストレート。あの(直球で押す)スタイルでいけるなら、それがいい。ファームでは真っすぐを30~40%くらいにして、いろんな変化球を練習しつつ、真っすぐの状態を戻そうとしていたんですけど、全然違うピッチング内容でした。でも、きょうは変化球がいらないくらいの出来だったと思います」
盛り上がる相手応援にテンション上昇 中軸相手に11球中9球が直球
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日が暮れても蒸し暑さが残るベルーナドーム。2軍とは迫力が違う西武応援団の音を聞き、自然とスイッチが入った。「僕は相手の応援が盛り上がっていると、結構テンションが上がってくるタイプ」。先頭の3番・マキノンを、直球3球で見逃し三振に斬ると、敵地のファンを一気に味方につけた。
続く4番・渡部はカウント2ー2から、外角への149キロで空振り三振。最後は5番・外崎を三ゴロに仕留めた。全11球中9球が直球。相手の中軸を真っ向勝負でねじ伏せた。
不振に陥った2023年 復調へ「野球ファースト」で練習漬け
もがき苦しみ、ようやく日の当たる場所に帰ってきた。昨季は主に中継ぎで51試合に登板し、飛躍の年となったが、今季は一転。先発挑戦を直訴し、開幕ローテーション入りを狙うも、春季キャンプ中から投げても投げても調子が上がらず、開幕1軍を逃した。2軍でも納得いくボールが投げられない日々が続き、次第に表情から笑顔が消えた。3、4月は「マジで毎日イライラしていました」と、どん底だった。
人は窮地で真価を試される。吉田はいら立つ気持ちの矛先を、趣味や遊びで紛らわすことなく、野球だけにぶつけた。「イライラして暗い気持ちになるのも嫌なので、とにかく練習しました。しないと気持ち悪いと思うぐらいに。休みの日も髪を切るぐらいで、あとは練習。野球ファーストです」。先輩からのゴルフの誘いも「今はそんな場合じゃないなと思ったので」と、きっぱり断った。
夜間に自室で黙々と〝投球〟 「部屋でもシャドーできるなって」
復調のきっかけの一つが、夜な夜な寮の部屋で取り組んだシャドーピッチングだった。「部屋で夜暗くなると、窓ガラスに自分が映るじゃないですか。それを見て、部屋でもシャドーできるなって思ったんです。窓の枠があるので、そこに合わせて(片足で)立って、ちょっとでも枠からズレたらやり直しって。重心の位置を意識しながらやっている中で、真っすぐ立てる場所を見つけた感覚がありました」。誰にも見られない鎌ケ谷の一室で一人タオルを握り、腕を振り続けた。
全てを野球に捧げた 「成長につながると感じたものはやってみた」
5月以降も調子の波に悩まされ、一進一退の状態が続いた。それでも、「2軍にいるからこそ、できることを」と、ウエートトレーニングから部屋の整理整頓まで、成長につながると感じたものは全てやってみた。
「断捨離とかもしましたね。私生活は絶対に野球につながると思うので。食事も意識して、タンパク質が取れるように部屋にホットプレートを入れて、ベーコンとか卵を焼いたりもしました。将来のことも考えて登板後にもウエートをしています。スクワットは160キロで10回。ベンチプレスは80キロ6回を2セットとか。入団時に比べたら全然、上がるようになりました」
苦境を乗り越えつかんだ成長 残り試合へ連投宣言!
こんなはずじゃないと、何度も自分にいら立ちながら、そのたびに歯を食いしばって練習に打ち込んできた。ようやくつかんだ1軍のマウンドで見せた快投。「だいぶマイナスから1軍生活が始まっていますけど、ちょっとは前進できたんじゃないかな」と笑顔を見せた。
「気を緩めず、これを最低限くらいだと思ってやっていきたい。残り試合も少ないので、連投してもベンチに入り続けて、投げられる限り投げたい」。秋田で培った雑草魂は今も健在。苦境を乗り越え一回り大きくなった背番号18が、チームの希望の光になる。