ファイターズ
《ハム番24時》8月26日
道北にも選手のドラマがある。「思い出の地といっても過言ではない」。26日に2軍ロッテ戦が行われた旭川を、今川はそう表現した。
話は9年前にさかのぼる。甲子園出場を目指していた東海大四(現東海大札幌)時代。高校最後の大会を目前に、野球人生のターニングポイントを迎えていた。当時はベンチ入りの当落線上にいる無名の選手だった。
札幌の強豪私学は夏の予選前、同地区のライバルに手の内を明かさないよう、旭川遠征へ出ることが多い。今川は「毎年来ていました。この遠征はメンバーの選別があって、そこで漏れた3年生は実質、引退試合になる。僕はギリギリのラインだったので本当に必死でした」と記憶を振り返る。
どれだけチームが勝ち上がっても、部内の競争を勝ち抜かなければ、選手として甲子園の土を踏むことはできない。極限状態に追い込まれていた青年は、同遠征の練習試合で高校初の本塁打を放ち、大アピールに成功。メンバー入りを勝ち取り、後に聖地で代打安打まで放ってみせた。
「僕の高校通算本塁打は2本だけ。そのうち1本が旭川の練習試合で、もう1本は国体なので公式戦。旭川はグラウンドがめっちゃ小さかったので、実際は1本みたいなものですね(笑)」。たった一振りで、人生は変わることがある。常にベストを尽くす男の成り上がりストーリーに、これからも注目したい。