《岩本勉のガン流F論》ピッチャーのハートはガラスでできている
■パ・リーグ21回戦 西武6ー0日本ハム(9月8日、エスコンフィールド北海道)
明らかに焦りを見せた上沢 いつもとは逆のボール
上沢にしては珍しい姿を目の当たりにし、あらためて思った。エースと呼ばれるピッチャーでも、ハートはやはり、ガラスでできていると。立ち上がりから状態は良かったのだが、0―1の七回にエアーポケットに入った。先頭から2者連続四球。特に2人目、中村を歩かせて様子は一変した。
明らかに慌て出した。ストライクとアウトの取り急ぎから、3連打を許した。コーナーから外に散っていくボールが持ち味なのだが、いつもとは逆で、球がいずれもベースの中央へと寄っていってしまった。となれば、結果は明らかだ。
経験豊富なエースがなぜ? 気持ちの動揺を誘った要因とは
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
経験のある上沢が、なぜ。西武の先発・平良の調子を見て、もう追加点は許されない思ったのだろう。自分で自分にハードルを課してしまった。また、中村に四球を与えた場面で、建山投手コーチがマウンドを訪れた。責任感の強いピッチャー。みんなの不安を払拭しようと、過度に力が入ったのかもしれない。
前回対戦した時も六、七回に失点していた。その記憶もよみがったのかもしれない。すべてが気持ちの動揺を誘った。ただ、このまま終わる投手ではない。この悔しさを次回に生かしてもらいたい。いや、生かすはずだ。是が非でも、あと2つ。勝利を2桁に乗せてもらいたい。
0封負けも自身の役割を遂行した郡司
打線は平良をはじめとする西武投手陣の前に無得点に終わった。だが、相手が良かったで片付けてはいけない。郡司の打席に果たすべき役割を見た。2安打もさることながら、六回無死一塁での第3打席。曲芸のような打ち方で、何とか二塁に打球を転がし、進塁打を放った。相手の調子にかかわらず、それぞれが自分のやるべきことを遂行した先に得点は生まれる。
トリックプレーはあり だが、奈良間の打撃も見たかった
四回のトリックプレーにも触れたい。2死二、三塁で二走のマルティネスが挟まれ、捕手からの送球と同時に三走の清宮がホームを突くはずだった。ところが、捕手の柘植が投球を前にこぼしたことで、清宮がスタートできなかった。タイミングが悪く裏目に出てしまったのだが、打席には奈良間がいた。
試合前までの西武戦での打率は・368。トリックプレーはファイターズが持つ作戦の一つだ。ただ、期待して打線に組み込んでいる選手。あのチャンスで、自由に打つ姿も見たかった。