新庄監督 張り巡らした二重の策「1対0の試合を予想していた」
■パ・リーグ21回戦 西武6ー0日本ハム(9月8日、エスコンフィールド北海道)
完敗も勝敗を分けた紙一重のトリックプレー
イチかバチかのギャンブルではない。実らなかったサインには、二重の策が張り巡らされていた。日本ハムは8日、エスコンフィールド北海道で行われた西武戦に0ー6で敗れた。試合後、新庄剛志監督(51)は「なかなか打てないと思ったから、こっちから仕掛けようと思って」と、ターニングポイントになった四回のプレーを苦渋の表情で振り返った。
動いたのは四回 先制点を狙ったマルティネス&清宮の走塁
両先発は上沢と平良。好投手同士の投げ合いとなった一戦は、序盤からロースコアゲームの様相を呈した。両右腕はともに三回まで被安打1で無失点と譲らない。先取点の持つ意味を重く見た指揮官は四回の攻撃で果敢に動いた。
2死二、三塁で、打席には奈良間。仕掛けたのは1ボールからの2球目だ。二走・マルティネスが大きく飛び出し、相手捕手が二塁送球する間に三走・清宮が本塁を狙う作戦だった。
想定外のプレーで奇策は不発 新庄監督「それは計算にないわ…」
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しかし、想定外の形で奇策は破たんした。相手捕手・柘植が送球前にボールを落球。三走・清宮はスタートを切るタイミングを完全に失った。結果的に清宮は三本間で挟まれてタッチアウト。新庄監督は「落とさなかったらポンポンって(二塁に)投げたんじゃないかな。1回落としたら、もう清宮くんは走れない。それは計算にないわ…」と不運を嘆いた。
あえて打席の奈良間には伝えず 考え抜いた上での戦術
不発に終わったこの作戦には知恵と工夫をこらしていた。2走者によるトリックプレーは打席に立つ奈良間には伝えられていなかった。自由に打つことができるため、仮に安打が出れば、大きくリードを取った二走・マルティネスは楽々と本塁に生還することができた。
打者が安打を放てば、一挙2点を得られ、走者のトリックプレーが成功すれば、貴重な1点を獲得できる。頭脳を駆使した戦術には、十分な勝算があった。「きょうの平良くんと上沢くんのピッチング見て、1対0の試合を予想していた」と指揮官。実らなかった秘策には、勝利への執念が込められていた。