《鶴岡慎也のツルのひと声》状態が良く気持ちも乗っている。それでも勝てないのがプロの世界
■パ・リーグ23回戦 西武10ー0日本ハム(9月10日、エスコンフィールド北海道)
素晴らしかった伊藤の状態 勝利への執念もあった
もったいないの一言に尽きる。先発の伊藤。調子はかなり良かった。一回、いきなり無死満塁のピンチを迎えたのだが、4番の渡部から3者連続の空振り三振。5番の栗山は153キロの直球で仕留めた。スプリットの落ちも良く、スライダーの曲がりも素晴らしかった。
気持ちの面でも勝利への執念が見えた。前回登板の9月2日。オリックスの山本由伸と投げ合ったのだが、一回に1点を奪われて0―1の完投負け。その教訓もあったはず。立ち上がりから飛ばしていたように思う。
詰めの甘さを露呈 痛打された勝負球
ところが、だ。二回、三回につかまった。味方失策やゴロを捕球し損ねた自身のフィールディングもあったが、ことごとく痛打された。原因は、本人のコメントにもあった通り、詰めの甘さ。追い込んでからの勝負球が逆球になったり、少々甘く入ったりした。
顕著だったシーンは3球勝負にいった2つの場面
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顕著だったのは三回。無死一塁から6番の佐藤龍、続くペイトンにヒットを許したシーンだ。いずれも追い込んでからの3球目をやられた。3球勝負は決して悪いことではない。だが、勝負する限り、ミスは許されない。どこに投げて打ち取るのか、慎重さも求められる。
求められる「気持ちは熱く、頭は冷静に」
状態が良く、気持ちも乗っている。それでも勝てないことがある。1つ勝つことの難しさを痛感したはずだ。気持ちは熱く、頭は冷静に―。言うまでもないが、より勉強になったことだろう。
圧巻だった池田のピッチング 自身にもチームにもプラス
大敗の中、爽快な気持ちにさせてくれたのが池田のピッチング。0―9の八回に6番手で登板した。登板間隔が空き、調整の意味合いもあった。それでも気合の投球で3者凡退。3人目の西川を空振り三振に打ち取ると、雄たけびを上げた。まるで1点差の緊迫した場面をしのいだ時のようだった。
どんな状況でも目の前の打者に集中する。これが、できるようで、なかなかできないもの。この日のように大勢が決したタイミングでの登板もあるだろう。ただ、そういう心構えは自身にもチームにも好影響を与える。自分の数字にも反映してくる。この日のようなピッチングを続けていってもらいたい。
タイトル争い真っただ中の万波 原点回帰を
最後に万波。正直、バッティングの状態はあまり良くはない。だが、タイトルを争えるチャンスはそう多くはない。力みもあるし、意識もするだろう。それでいい。この経験はプラスになる。技術的には原点回帰が必要だ。直球を強くセンター方向、バックスクリーンへはじき返す意識で、打席に立ってもらいたい。当然、私も、タイトルを手にしてほしいと願っている。