【北海40度目の夏・驚異の粘りを探る】②2試合連続の同点打で劇的勝利導いた小保内貴堂外野手(3年)
今夏のラッキーボーイがムードを一変
夏の甲子園1回戦明豊戦。4点ビハインドの七回裏に反撃の2ランアーチを放った途中出場の小保内貴堂外野手(3年)。その後2試合連続同点打を放つなどラッキーボーイとして北海の選手層の厚さを見せつけた。
試合前日にスタメン落ち「あぁ、甲子園に来たのに」
チーム最小兵の165センチ。背番号17の小保内の甲子園はベンチスタートから始まった。南北海道大会でも3投手の継投策の影響でフル出場は決勝の1試合のみ。明豊戦の試合前日にスタメン落ちを告げられ「1回落ち込んで『あぁ、甲子園来たのに』ってなったんですけど、試合出た時にどうにかしないとって切り替えた」と、試合途中で声がかかるのを待ちながら準備を続けた。
出番は劣勢の中で訪れた。試合は三回に明豊が1点を先制。北海は四回に1死二、三塁から内野ゴロと相手失策で逆転に成功。五回に再び逆転を許したが、六回にまた同点に追いつくシーソーゲームを展開した。
七回表、守備交代で途中出場
しかし七回、4番手の岡田彗斗投手(3年)が明豊打線につかまり、長短3本の安打などで3失点降板。なおも1死三塁のピンチの場面で、先発した熊谷陽輝一塁手(3年)が3度目のマウンドへ。これに伴い、2番手で登板した長内陽大左翼手(3年)が一塁へ、谷川凌駕右翼手(2年)が左翼へ回った。ここで小保内に、平川敦監督(52)から「行くぞ」と声がかかった。「この試合勝たないと、次ない。負けている中で九回まであと3回。出場機会は自分で作らないと」と、気合を入れて右翼の守備についた。
ファウルゾーンへの飛球をフェンス激突顧みずキャッチ
野球界でよくささやかれる「代わった所へ打球が飛ぶ」。守備について6球目「甲子園で一番印象に残っている」ビッグプレーが飛び出した。1死三塁から熊谷の暴投で1点を失い4点差に。2-2からファウルゾーン一塁側フェンス際に飛んだ難しい飛球を、フェンスに激突する危険を顧みず果敢にスライディングキャッチした。
「あのプレーがその後に全部つながってっいった」
「アンケート(の目標欄)にも『日本一の外野手』ってずっと書いている。本当になれると思って守備練習に取り組んできていたんで、あのプレーで一気に球場が見えたっていうか視界が広がった。守備からリズムってよく言われるけど、自分で余裕を作ったっていうか、あのプレーがその後に全部つながってっいったんじゃないかな」。少年野球の東16丁目フリッパーズで学童野球日本一に輝いた外野手が甲子園でもその実力をいかんなく発揮した。
七回裏、甲子園初打席で公式戦初アーチ
好守の直後、今度はバットでスタンドを湧かせた。先頭の7番・関辰之助三塁手(3年)の左前打で、この試合2度目の先頭打者の出塁に成功。続く小保内の甲子園初打席、内角高めの初球をフルスイングした。打球は左翼ポール際へ飛び込む公式戦初アーチ。「ベンチに帰ってきた瞬間、(これまでの高校生活で)見たこともないような喜んだ姿の選手が一杯抱きついてくれた」。これで一気に2点差に迫り、沈みかけたベンチのムードは一変した。