引退試合に臨んだ谷内亮太 二回に先制タイムリー 有終の美を飾った男の誇りとは
■パ・リーグ24回戦 ロッテ4ー2日本ハム(9月27日、エスコンフィールド北海道)
先制打に5ポジション 「らしい」ラストゲーム
ベンチは総立ち、ファンの目には涙―。日本ハムの谷内亮太内野手(32)が27日、引退試合に臨み、有終の美を飾った。ロッテ戦に「7番・三塁」で先発し、二回2死三塁の好機で先制の中前打をマーク。新庄監督の計らいで、三塁、一塁、二塁、遊撃、右翼と5ポジションを守り、球界屈指のユーティリティプレーヤーらしい最後となった。
「エラーもなかったし、ヒットも打てたし、良い一日になったなと思います。こんな幸せな日はない。ずっと自分を見てくれている一日って、なかなか僕のプロ野球生活ではなかった。主役ってことで恥ずかしい部分はありましたけど、良い気分で終われるなと思います」
粘って5球目をセンターへ 仲間もベンチでガッツポーズ
現役ラストゲームでも、谷内は谷内だった。「ぶざまな姿は見せないように」と、いつも通りの準備で臨んだ一戦。二回に回ってきた最初の打席で快音を鳴らした。2死三塁の先制機で、追い込まれながらも粘り、5球目の外角スライダーに食らいついて捉えた。
打球が中前で弾むと、清宮、万波らベンチの仲間たちは立ち上がってガッツポーズ。〝主役〟が塁上で手を挙げて笑みをこぼすと、スタンドのファンは号泣した。
ファンに届けた勇姿 「恩返しの形にはなったかな」
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「多くの選手は急に辞めることになって、あの時が最後だったんだって、ファンの皆さんはそうなっちゃうと思う。これが最後だと思って、見てもらいながら辞められるっていうのは本当に幸せだと思います。そういう意味では一つ、ファンの方たちへの恩返しの形にはなったかなと思います」
間近のポジションでファンに別れ 新庄監督とは熱い抱擁
エスコンフィールドが一体となって、功労者を見送った。谷内はイニングごとにポジションを変え、最後は右翼へ。五回無死一塁で交代を告げられると、自身のファンが多く詰めかけたスタンドに何度も頭を下げた。ベンチ前で出迎えたチームメート一人一人と握手を交わし、最後は新庄監督と抱擁。11年間のプロ野球選手生活に別れを告げた。
常にベストを尽くす 梅林「本当に勉強になりました」
常に、後輩たちの手本だった。1軍ではベンチスタートも多かったが、「どこのポジションにどこのタイミングで行ってもベストを尽くす」と、準備にこだわる姿は、チームに大きな影響を与えた。
4年目捕手の梅林は今季中盤に「谷内さんは試合後半になったら、ベンチにいない。いつも裏で汗だくになって走っているんです。ポジションは違いますけど、どう準備すれば良いのか、本当に勉強になりました」と感謝していた。
切れることのなかった気持ち 最後まで目指した1軍舞台
7月以降は2軍暮らしが続いたが、「今プレーしているところで最善の結果を出せるように努力し続けることが、自分に与えられている仕事、使命」と猛暑の鎌ケ谷でも一切、妥協せず、試合後もバットを振った。いつ、チャンスが来るかは分からない。それでも、「気持ちを切らしたら終わり」と最後まで1軍昇格を諦めなかった。
プロでも11年間怠らなかった準備 「一つの誇り」
谷内には、プロとして守り続けてきたポリシーがある。「僕は2軍暮らしが長かったので、今年辞めることになったとしても、あの時あれをしていれば良かったなとか、結果の後悔じゃなくて準備の後悔だけはしないようにっていう気持ちでずっとやってきた。そこは最後までやりきることができたと思いますし、一つの誇りじゃないですけど、そういうのかなと思います。大した成績も残していないので、そういう自分の中の取り組みに対して誇りは持てたかなと思います」
11年間、一日たりとも準備を怠らなかった〝誇り〟を胸に、次の人生へと踏み出していく。