《岩本勉のガン流F論》上沢から始まった素晴らしいバトンリレー たかがではなく、されど1勝
■パ・リーグ25回戦最終戦 日本ハム4ー3ソフトバンク(10月1日、ペイペイドーム)
負けていても不思議ではない展開 見事だった投手陣の踏ん張り
わずか2安打。四回以降はノーヒット。しかも、そのうち5イニングで3者凡退。ソフトバンクは10安打を放った。それでも勝った。二回には3失策が絡んで2点を奪われ、一時リードを許した。負けていても、おかしくないゲーム。トピックスはやはり、1点リードをしのぎ切った投手陣だろう。
〝失敗〟を繰り返さなかった池田と田中正
中でも3番手で登板の池田と、4番手でラスト九回を締めた田中正。独特の緊張感を漂わせ、マウンドに上っていたはずだ。池田は9月24日の楽天戦で1―1の九回に登板し、サヨナラ2ランを浴びた。田中正は前日、2―1の九回に2被弾し、こちらもサヨナラ負けを喫していた。
首脳陣に腹を決めさせたであろう、気持ちのこもった投球
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その2人が今回、危なげなく、最少点差を守り切った。田中正はパーフェクトと完璧なピッチングを披露した。今季、何度となく、勝負どころでのマウンドを任せられてきた。とはいえ、厳しいプロの世界だ。仮に継投に失敗していたなら、首脳陣に「来季のセットアッパー、抑えはどうする?」と迷いが生じてもおかしくはない。そこで、「来季も任せよう!」と腹を決められるだけの結果を見せてくれた。
大なり小なり、試練を乗り越えた後の姿が大切で、そこを見ている。シーズンのストロングフィニッシュに向け、失敗を繰り返さないという強い意志を感じた。クライマックスシリーズ進出のためにも負けられないソフトバンクが相手だった。大きく価値のあるリリーフだった。
勝利への流れをつくった上沢 真骨頂を披露
その快投の流れをつくったのは先発の上沢に他ならない。自責点にならない失点もあるなど、苦心のマウンドが続いた。それでも粘って粘って勝ち投手となった。この粘投こそが、上沢の真骨頂。新たなステージも見据えているだろう。こちらも勝利に対する強い思いを感じた。
特に五回1死二、三塁で、ドラフト同期の近藤を空振り三振にねじ伏せたシーン。仕留めにいったボールは見事、アウトコース低めにコントロールされていた。リリーフ陣は先発のマウンドさばきを見ている。素晴らしいバトンリレーは上沢の投球から始まった。
大きく価値のある1勝 膨らむ来季への期待
この日の1勝は、たかが1勝ではない。されど1勝だ。昨季の勝利数「59」を1つ上回った。小さいかもしれないが、確実に前進している証しだ。来季、大いに期待したい。