２１日、苫小牧で岩見沢緑陵と全道初戦

　年末年始の風物詩、全国高校サッカー選手権の北海道大会が１０月２１日に苫小牧で開幕する。創部４年目で初出場を果たしたクラーク札幌大通キャンパスは２１日の１回戦で岩見沢緑陵と対戦する。指揮を執るのは札幌市出身で現役時代に国内外２２カ国・地域でプレーした〝アジアの渡り鳥〟元プロサッカー選手の伊藤壇監督（４７）だ。現役引退翌年の２０２０年４月に同校が連携協力を結んだコンサドーレ北海道スポーツクラブから派遣され、初年度は部員３人からスタート。わずか３年半で全国への第１関門を突破した。今年の全道決勝は１１月１２日に札幌ドームで初開催される。

伊藤監督「まずは初戦突破。一戦一戦ハードーワークして」

　いよいよクラークが全道初陣に挑む。９月１０日の札幌支部のブロック決勝は５－０で札幌東陵に完封勝利。伊藤監督は「まずは初戦突破ですね。初出場なんで失うものは何もないんで。目の前の一戦一戦ハードーワークして一つでも多く上に行けるように」と意気込んだ。

登別大谷高で全国高校選手権に初出場１６強

　伊藤監督は、登別大谷高３年時に全国高校選手権に初出場で１６強入り。仙台大を経て１９９８年にＪＦＬブランメル仙台（現ベガルタ仙台）に攻撃的ＭＦとして入団。２３試合に出場しＪ２昇格に貢献した。その後は２０００年のシンガポールリーグを皮切りに、インドネシアや香港、マレーシアなど１９年のグアム・ローヴァースＦＣで引退するまで２２カ国・地域でプレーを続け、いつしか〝アジアの渡り鳥〟と呼ばれるようになった。

「将来的にはアジアの国の代表監督になりたい」

　指導者を志したきっかけは現役終盤の１６年。「キャリアの初めの方は全然指導者になる選択肢はなかった」が、札幌でサッカースクールを立ち上げ中学生以下を指導。「将来的にはアジアの国の代表監督になりたい夢があって、協会の人と話した時に日本のどこかのチームを指導しなきゃダメということだった。高校サッカーに興味があったんで、いいタイミングで話をもらった。ただ、やるからには中途半端に自分の夢を追い求めることはできない。責任を持って子供を預かってる。初代監督なんで、自分の中では全国大会に出場させるまでは僕の責任」と覚悟をもって引き受けた。

監督就任直後、部員はわずか3人

　２０年の監督就任直後、想像とは違った指導者生活が待ち受けていた。部員はわずか３人。その後、７人まで増えたが公式戦出場はかなわなかった。翌春、いまの３年生が１２人入部。公式戦出場は可能になったが、チームは大きな問題を抱えていた。

「数えきれないぐらい家まで行って生徒に寄り添ったりした」

　「あっという間に辞めていった子がたくさんいた。人数も揃わないし、不登校の子も多かった。まず、当たり前のことを徹底することから始めました。とにかく毎日、練習という名の授業に来る。１年目も２年目もそうですけど、一度たりとも全員が揃ったことはなかった。人数が少ないから僕も一緒に練習参加したこともあるし、モチベーションを落とさないように声かけもしました。数えきれないぐらい生徒の家まで行って、学校に来れなくなった生徒に寄り添ったりとかもしましたね」。

メンバーギリギリでブロック決勝進出

　大会には出場したが「１年間、常にサブがいないような状態だった」と指揮官。初出場で札幌支部ブロック決勝まで進出したが「その時もメンバーがギリギリ」。２－４で北海道科学大高に敗戦したが「サッカーがどうのこうのっていうレベルじゃなかったですね」と振り返る。

（後編に続く）

仙台をスタートにアジア諸国２２カ国・地域でプレー

◆プロフィル　伊藤　壇（いとう・だん）１９７５年１１月３日、札幌市生まれ。札幌元町北小３年からサッカーを始め、札幌栄南中を経て登別大谷高では３年で全国高校選手権初出場。２回戦の矢板東（栃木）戦でハットトリックを決めるなどベスト１６入りに貢献した。仙台大ではインカレ、総理大臣杯でベスト８入りを果たす。１９９８年にＪＦＬブランメル仙台入り。攻撃的MFとして２３試合に出場し、J２優勝に貢献する。２０００年からシンガポール、オーストラリア、ベトナム、香港などアジアを中心に１９年に現役引退するまで２２カ国・地域でプレー。１６年、札幌にサッカースクール「チャレンジャス」を開校。 ２０年４月からクラーク高男子サッカー部の監督に就任した。