《岩本勉のガン流F論》シーズン回顧2023 ~新庄監督編~ 敬遠球打ちに秘められた新庄スタイル
2年連続の完敗 貪欲さが見られなかった
「トライアウト」と銘打った1年目を経て迎えた今季。新庄監督は公言通り、優勝を狙っていたはずだ。ところが、だ。結果は2年連続の最下位。7月には球団記録の「14」に迫る13連敗を喫した。昨年に続き、パ・リーグ5球団すべてに負け越す完敗を喫した。
1年目の昨季、負傷離脱中の選手を除き、支配下全選手にチャンスを与えた。今季はそれぞれがレギュラーを手にするべく、貪欲に競い合うはずだった。だが、期待通りにはいかなかった。
失敗を恐れないチャレンジを求めた指揮官
今季、ベンチの新庄監督を見ていて感じた。ずっと頭の上に「?」が付いているような表情を浮かべていると。試合後のコメントを聞き、合点がいった。「何でやらないの?」。そのフレーズを何度も耳にした。「何でできないの?」ではない。失敗を恐れず、立ち向かう姿を求めていた。
植え付けたはずだった執念と姿勢
勝利への執念も植え付けたはずだった。22年はエンドランにスクイズ、偽装スチールと随所に奇襲を仕掛けた。それは決してスタイルではない。姿勢だ。強者に立ち向かうための姿勢を叩き込んでいたのだ。
かつて新庄〝選手〟が披露していた猛アピール
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かつての新庄選手がそうだった。監督に就任する前、話をする機会があった。阪神に在籍していたプロ3年目を振り返ってくれた。首脳陣が2軍に来ると、「猛烈な肩を見せつけた。ノーサインだけど、盗塁もした」そうだ。
努力が結実した伝説のシーン
伝説のあのシーンについても聞かせてくれた。1999年6月の阪神―巨人戦。伝統の一戦だ。新庄選手は槙原投手が投じた敬遠球を捉え、サヨナラ打にした。決して、思いつきの一打ではない。人知れず、何度も何度も敬遠球打ちを繰り返してきたのだという。それこそが、レギュラーをもぎ取りにいく、何としても勝利をつかみ取る「新庄スタイル」なのだ。
離日が生んだ日本球界とのブランク
タイムラグとブランクが指揮官のプランに狂いを生じさせたのだろう。2006年を最後に現役を引退した。直後、田中賢介や森本稀哲が必死にレギュラーを死守しようと躍起になっていた。そういった姿を目に焼き付け、日本を離れた。その後、若者の事情、指導事情、環境や立場。プロ野球を取り巻く、あらゆるものが変化した。
その変化に対応するのに2年を費やした。今時の選手を理解するのに1年は短すぎた。1年で終わるはずだったトライアウトも延長せざるを得なかった。勘の良い男。負け続けたこの2年で、すべてを掌握したに違いない。
来季こそ鬼になる新庄監督 楽しみな指揮3年目
今年1月、「鬼になる」と宣言した。だが、なりきれなかった。来年こそ、めちゃめちゃ厳しい新庄監督が見られるだろう。その一つがエスコンフィールド北海道での秋季キャンプ。グラウンドキーパーの皆さんは今から緊張しているかもしれない。〝はげはげ〟になった芝生を想像して。本人にも当然、プライドがある。今から楽しみで仕方がない。