【国体】北海の伏兵が躍動し甲子園で敗れた神村学園にリベンジ! 29年ぶり〝優勝〟王手に熊谷「勝って終わりたい」
■かごしま国体 高校野球硬式 第1日(10月9日、鹿児島・平和リース球場)
▽1回戦 北海4-1神村学園(鹿児島)
11日の準決勝・仙台育英戦に勝てば〝優勝〟が決定
7年ぶり出場の北海が、夏の甲子園3回戦で4-10と完敗した神村学園を4-1で下してリベンジに成功。優勝した1994年以来、29年ぶりに初戦を突破した。甲子園でスタメンだった2年生は、北海道で行われている秋季札幌支部が雨天順延した影響で合流できず、先発は全員3年生。先発した熊谷陽輝投手(3年)が6回⅔を1失点で試合をつくると、0-1の六回2死一、二塁から、7番・堀田晄大左翼手(3年)が中越え2点三塁打で逆転。さらに八回には9番・谷亮汰遊撃手(3年)がダメ押しの2点三塁打を放つなど、2桁背番号の3年生が意地を見せた。国体も雨の影響を受け、11日の準決勝2試合で打ち切りが決定。あと一つ勝てば決勝に進んだ2校の〝同時優勝〟となる。北海は甲子園準優勝校の仙台育英と最後の戦いに挑む。
完全アウェーの中 雨により約4時間遅れで試合開始
3点リードの九回2死一塁。高く打ち上がった打球を、今北孝晟二塁手(3年)ががっちりつかんでゲームセット。早朝7時の球場入りから、雨により約4時間遅れで始まった試合が終わったのは午後2時半過ぎだった。神村学園のお膝元で行われた一戦には、ブラスバンドを始め、地元の強豪を応援しようと、外野席まで埋め尽くす勢いの大観客が詰めかけた。完全アウェーの雰囲気の中、2カ月前には歯が立たなかった甲子園4強を打ち崩した。
甲子園登板時から6キロ減のほっそり熊谷が力投
甲子園出場時から6キロ痩せ、少しほっそりとした熊谷がマウンドで力強く躍動した。セットポジションからワインドアップに変更して球威が増した直球と、キレのある変化球で六回まで7奪三振。この回は1死から神村学園の4番・正林輝大(2年)に甘く入った直球をスタンドに運ばれたが、失点はこの1点のみだ。
野球人生の中で「ベストピッチができた」
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「今までピッチャーをやってきた中で、ベストピッチができた。球の質だったり回転軸もすごい良くなって、甲子園とはちょっと違う球質だったと思うので、神村打線を翻弄できたかな」
大黒柱の力投に2番手の長内陽大投手(3年)、エース岡田彗斗投手(3年)ら救援陣も無失点継投で応えた。
3年生の意地 背番号18番の堀田、同15番の谷がそれぞれ2点三塁打
〝伏兵〟がチームを勝利に導いた。打線は四回まで神村学園の先発・松永優斗投手(3年)の前に無安打。五回に谷がチーム初安打をマークすると、六回に堀田、八回に谷が共に2死一、二塁のチャンスで2点三塁打を放った。堀田は背番号18番、谷は同15番。甲子園に出場した能力の高い2年生が抜けても、3年生だけでやれるところを見せた。
札幌に残った平川敦監督(52)に代わり、全国大会で初めて指揮を執った部長の立島達直監督代行(33)は「堀田は試合が近いからといって頑張るのではなく、常に一生懸命、バットを振れる子。あんな素晴らしい右中間を打てるなんて、びっくりだし嬉しいですね」と、目を細めた。
熊谷も「ちょっと感動しました。谷、堀田は、甲子園であまり出ていない分、(北海道に)帰って来てからすごい練習していた。その成果がこういう大舞台で結果を残せた」と2人の努力家を讃えた。
想定外の札幌支部2日間順延でベストメンバー揃わず
厳しい戦いを強いられた。甲子園では、1回戦の明豊戦で劇的サヨナラ打を放った大石広那捕手(2年)らスタメンの5人が2年生で、当初は国体もベストメンバーで挑む予定だった。しかし、新チームが出場する北海道での札幌支部予選の日程が雨で延期して想定外の事態となった。元々、道高野連は国体を考慮して札幌支部の日程を1日繰り上げていた。北海が予選を勝ち進んだとしても代表決定戦は今月6日を予定していたが、まさかの2日間の雨天順延。そのため国体の選手変更届けの締め切り日だった7日までに間に合わず、5日に鹿児島入りしていた3年生12人と新チームメンバー外の2年生3人を合わせた15人で戦うこととなった。
公式戦初出場の3年生も無難に守備こなし無失策
この日の国体1回戦を戦ったメンバーは、5番・中川光月捕手(3年)、8番・藤本竣太右翼手(3年)が公式戦初出場だった。それでもチーム全体で無失策と伝統の守備を披露し、改めて選手層の厚さを見せつけた。
新チームに気を遣いながらの準備
甲子園敗退後、平川監督から「3年生は別に国体に出なくてもいいから。もう一回、考え直してこい」と突き放された。熊谷は「一日考えた結果、野球を続ける人で国体に出てリベンジしようって、気持ちがひとつになった」。3年生は2年生の練習の邪魔をしない程度に参加。自主トレを中心に毎週末、新チームと練習試合をするなど、実戦感覚を維持しながら国体に向けて準備してきた。
甲子園決勝と同カードの1回戦を勝ち上がった相手と〝優勝〟を懸けて戦う
高校ラストマッチには、最高の舞台が用意された。準決勝の相手は、夏の甲子園決勝と同カードとなった国体1回戦で優勝校の慶応に11-0(七回コールド)と大勝した仙台育英に決まった。泣いても笑っても「HOKKAI」のユニホームを着て一緒に戦う最後の試合。熊谷は「最後にそういう強いチームとやれてすごい嬉しいですし、次も勝ちにこだわってやっていきたい。もちろん勝って終わりたい」。3年間培ってきた全てを出し切り、29年ぶり3度目の〝優勝〟を鹿児島の地で刻む。