ファイターズ
2021/11/01 17:26

≪2021F検証㊤≫波紋呼んだ主砲の放出

 日本ハムは今季の全日程を終了し、3年連続の5位にとどまった。開幕直後に引き分けを挟んで7連敗を喫すると、浮上のきっかけがつかめないまま、ズルズルと下位に沈んだ。主砲の暴力行為と電撃トレード、核になる選手の相次ぐ不振―。想定外の出来事が頻出し、屋台骨は揺らいだが、未来につながる希望は確かに、あった。シーズン通してチームを追いかけた取材班が検証する。

 8月16日。空気が張り詰めていた。8人ほどの担当記者が、神戸市内で栗山監督を囲んでいた。11日に在籍14年目を迎えていた主砲の中田が同僚選手への暴力行為により、出場停止処分を受けていた。当初は「時間が欲しい」と悲痛な表情だった監督が、心の整理を付けて語り出した。

 全ての責任を一身に背負っていた。そして抑揚を付けず、悩み抜いて導き出した答えを明かした。「正直、このチームは難しいかな」。日本ハムの顔だった中田の放出を示唆していた。編成の根幹にかかわることを現場の指揮官が口にした。異例だった。

 20日に巨人への無償トレードが発表された。球団の意思を代弁した栗山監督が直接動き、頭を下げて所属先を決めた。統一選手契約書第17条(模範行為)違反を根拠とした出場停止処分は解除された。長期謹慎となれば、選手としての未来をつぶす可能性があり、非難は覚悟の上で選択した。

 受け止め方はさまざまだった。ファンクラブ会員の一人は「中田選手を許せないのではなく、許したかったのに…」と打ち明けた。巨人の一員として謝罪する姿は、裏切られたような感覚に陥ったという。

 公式SNSに掲載された動画で、差別的と取られておかしくない発言もあった。ホームページで川村社長が謝罪したが、対応の遅れを指摘する声もあった。選手を守るため―という大義は同じでも、手段を巡って球団内でも意見が割れていた。

 チームの低迷と一連の不祥事は、決して無関係ではないはずだ。来季は現場もフロントも体制を一新し、再出発する。浮かび上がった教訓をどう生かすのか。真価が問われる。

関連記事一覧を見る

あわせて読みたい