現役引退を発表した小野伸二には本当にお疲れさまと言いたい《河合CRC竜の眼》
浦和、札幌で共にプレー
浦和、札幌で共にプレーしたMF小野伸二が自身の44歳の誕生日だった9月27日に現役引退を発表した。8月上旬に人づてにその話を聞き、その直後に本人から改めて報告を受けたが、やはり寂しさもあるし、その一方で本当にお疲れさまと言いたい気持ちだ。ファン・サポーターの皆さんへは自身のインスタグラムで引退を発表したが、その反響はすごいものだったし、事前に話を聞いていた私も画像で形として見て改めて寂しさを感じた。長きにわたって日本サッカーをけん引してきてくれたことに本当に感謝しかない。
初対面は高校2年の時の国体
私が初めて伸二のプレーを見たのは高校2年の時の福島国体だ。伸二は1年生ながら静岡県選抜の10番を背負っており、私がいた埼玉の試合の次に静岡が登場したので、どんなプレーヤーなのかと試合を見ていたら「こんなやつがいるのか」というぐらいうまく、力強い選手だった。ハーフウエーライン少し手前から浮き球でボレーシュートを撃つと、それがクロスバーに直撃しガーンというすごい音が鳴ってゴールが揺れるぐらいの威力で、「これはちょっとモノが違うな」というのが当時の印象だった。
浦和時代は一番年下だったのでよく話をした
私は1997年、そして伸二は翌98年に浦和へ加入したが、浦和はトップチームとサテライトチームで練習グラウンドも違ったので、ピッチ上で一緒にプレーした記憶はほとんど無いが、プライベートでは食事に行くことが多かった。先輩と一緒に私たち後輩が付いていくのだが、だいぶ年上の先輩が多く、僕と伸二が一番年下だったのでよく話をしていた思い出がある。
電話で「一緒にやりたい」と告げた13年のクリスマスの頃
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
その後は2人とも浦和を離れてそれぞれのキャリアを歩んだが、私が札幌に在籍していた2013年末、札幌の野々村芳和前社長(現・Jリーグチェアマン)から当時オーストラリアのチームに所属していた伸二の獲得に動いていると話を聞かされた。「竜二からもアプローチしてほしい」と言われて、クリスマスの頃に伸二から電話があったので、私が札幌に感じていたメリット、デメリットそれぞれの部分を包み隠さず話し、その上で「また伸二とプレーができるなら俺はうれしい。一緒にやりたいよ」と伝えさせてもらった。
同じユニホームで一緒にプレーし感慨深かった
札幌への移籍を決断した伸二は翌年1月に仮契約を交わし6月に札幌へやって来た。毎年のように会っていたこともあって新鮮さは特に無かったが、同じユニホーム、練習着を着て、同じピッチでランニングをしたりパス交換をしていると、浦和時代にはあまり一緒にプレーできなかったこともあって、とても感慨深かった。
試合前に宣言していた札幌初ゴール
一緒に戦った試合で特に印象に残っているのが、伸二が移籍後初ゴールを決めた15年10月4日のアウェー東京V戦(2〇0)だ。試合前に伸二が私に「今日はゴール決めるよ」というようなことを言っていて、実際にゴールを決めたのがすごかった。うまくGKのタイミングをずらし、左足で優しくパスをするようなシュートで決めたゴールだったので、やっぱりうまいなと感じさせてくれた。
私の引退試合が伸二の1回目の札幌ラストゲーム
19年途中で琉球へ完全移籍することとなり、その時の札幌ラストゲームが8月10日に札幌ドームで行われた浦和戦(1△1)。試合前に私の引退試合が行われることが前から決まっていたので、それをつぶしに来たのかと思ったし(笑)、「わざと合わせてきただろ」とジョークを言ったりもしていた。琉球に移籍することについて伸二から相談は無かったし、私も自分が引退することを相談していなかったが、それが私たち2人らしいなとも思っている。
21年に再び伸二が札幌へ戻ってきたのはとてもうれしかった。私は現役を引退してクラブで働いていたが、立場は違えどまた一緒に戦えることもそうだし、何より近くで話ができることがやはりうれしかった。
「引退するまではプロサッカー選手」をリスペクトしてもらたい
伸二のラストゲームとなる札幌の最終戦の相手は、プロキャリアをスタートさせた浦和。こういう偶然もなかなか無いと思うし、サッカーの神様が引き合わせてくれたんじゃないかと思っている。その試合まであと2カ月弱だが、引退するまではプロサッカー選手であるという本人の強い要望を、ファン・サポーターやメディアの方々もリスペクトしてもらいたい。伸二もそう言い切ったのなら、最後までチームのために戦ってほしいなと思っている。
今後も伸二は札幌に関わってくれると思っている
私が現役だった頃から、このクラブを2人で良くしていこう、どうやったら大きくなるかなということをずっと話してきたので今後も伸二は札幌に関わってくれると思っている。その一方で伸二が日本サッカー界において一つのチームに縛られることがもったいないなという気持ちもあるので、引退後は日本サッカーの普及、発展のために活動してもらいたいと思っている。もちろん札幌に在籍した上でやってくれれば、それはとてもうれしいことだ。
これからも札幌に関わってくれることは間違いないと思うので、今後も一緒にチームのために、北海道のために活動していきたい。