別海が全道初勝利 中道航太郎主将が劇的逆転サヨナラ弾【秋季全道高校野球】
■秋季北海道高校野球大会第2日(10月19日、札幌ドーム)
▽2回戦 別海4-3苫小牧中央
4年ぶり全道の舞台へ
劇的幕切れで歴史を作った。4年ぶり出場の別海が1点ビハインドの九回に中道航太郎捕手(2年)が、大会第1号となる逆転サヨナラ2ランで苫小牧中央を撃破した。1年秋から主砲を担ってきたが、調子を落として釧根支部2回戦から7番に降格していた元主砲の一発で、創部46年目で3季通じて初の北海道大会勝利を札幌ドームで果たした。
「柵を越えたのが見えた瞬間に、ちょっとやったー!」
頼れる主将が一振りで決めた。中道が札幌ドームに描いた大きな放物線が左翼席最前列に飛び込んだ。「ストレートだったんですけど、コースはあんまり覚えてなくて。無我夢中。外野の頭を越えてくれたらいいなって感触でした。柵を越えたのが見えた瞬間に、ちょっとやったー!」と、両手を何度も空高く突き上げ仲間が待つ本塁に飛び込んだ。
主将就任と同時に調子落とし7番降格
1年秋から主砲を務めてきたが、主将就任と同じくして調子を落とし秋の支部2回戦から7番に降格した。「自分の悪い癖ってのが出てて、突っ込んじゃったら打てなくなっちゃって。自分のバッティング、ライナーのバッティングができなかったので。呼び込めなくて、ちょっと前で弾いちゃっていた。自分の中でストレスを感じてないつもりだったんですけど、どっかで感じていたのかな」。7月下旬から4泊5日の紋別合宿では酷暑の中過酷なメニューを消化。精神的にも鍛えられ「それを乗り切ったことで秋に釧根支部で優勝して、この1回戦に勝ったと思います」と胸を張った。
過去3回の北海道大会は全てコールド負け
2000年秋に全道大会に初出場。元武修館監督の島影隆啓監督(41)が2016年に就任。これまで秋は2度、夏は1度、全てコールド負け。「もう8年長かった。なんで勝てないんだろうってずっと苦しんでた」。この試合も何度も苦しい場面があったが、元4番の一振りで負の歴史に終止符を打った。整列が終わってスタンドを見上げると、うれしい光景が島影監督の目に飛び込んできた。「父兄もいっぱい来てくれて、OBがすごいいたんですよ。あいさつして上を見たらOBがいっぱい来てくれて。この辺にいるOBとか、学校休んできてくれたりとか、仕事休んできてくれたり。本当に『あー良かったなって、やっと勝ったとこ見せられたな』って、ちょっとこみ上げてきましたね」と声を震わせた。
九回無死一塁、監督から「打たすぞ」、ベンチ全員が「行きましょう」
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
実は九回の劇的幕切れの直前、ベンチ内で指揮官は選手にこう切り出した。無死一塁、犠打や進塁打でもおかしくない場面だったが「『打たすぞ。ここで打てなかったら俺を責めるなよ。でも、これで勝負かけるからな』って言ったら、全員が『行きましょうって言ってくれた』」。強攻策。ナインの言葉で腹は決まった。
伝令に力投していた堺投手送り「決めてこい」
伝令には、力投を続けていた堺暖貴投手(2年)を送った。「ちょっとなんか言ってきてくれと。なんでもいいからちょっと行ってこい」。堺は「札幌ドームはフェンスが広かったりする。『決めてこい』とは言ったんですけど、まさか本当に決めるとは思ってなかった。ムードメーカー的な存在で、いつもチームを元気づけてくれる。自分たちもプレーしやすいし、野球以外でも楽しませてくれるすごい面白い人です」と、女房役の一発に自然と笑みが浮かんだ。
出場チーム唯一登録制限に満たない部員16人
部員16人。出場20校中、唯一登録制限の20人に満たない。紅白戦にも人数が足りない。練習試合の相手を探すのにもバスで長時間の移動が欠かせない。「どこ行くにもバス代がかかる地域なんです。今年は父母会の協力もあって、遠征とか合宿とかをたくさんやらせていただいて本当に感謝している。人数が少なくて本当大変だっていうのは、それはそれでしょうがない。逆にその中でも勝てるんだと。田舎の公立校でも、人数いなくても、同じ高校生なんだっていうのをずっと言い続けてきた。そして今回、全道出場が決まった時も、強豪私立を倒す、絶対私立を倒すんだ、南のチームに勝つんだって話をしてきたので、強豪の苫小牧中央さんで達成できたってのは本当に嬉しい」。
地域の説得で、2年間離れていた高校野球に復帰
指揮官は2013年秋を最後に約2年間、高校野球の現場を離れた。「普通だったら戻ってこれないと思うんですよ。地元に帰ってコンビニのおじさん。高校野球なんて戻れないと思うんですよね。その時に地域の方々がほんとに一生懸命動いてくれて、学校も説得してくれたおかげ。ほんとに地域の皆さんのおかげ」と感謝の心を忘れない。
島影監督「必ずベスト4に行く」
歴史を作った別海ナイン。8強入りの次はもちろん4強だ。「私自身が武修館で初めて監督をやった時にベスト4までいっているんですよね(09年北大会)。まずはそこに行くぞと。それだけの力を持ってるから、必ずベスト4に行くっていう目標を立てて、新チームスタートしている」。殊勲の中道も「自分たちの野球をしっかりやっていけば勝てると思う。今日よりもレベルアップした野球をしていきたい」。全道初勝利はすでに過去。前だけ見つめ、別海がさらに勢いに乗る。