鎌ケ谷で練習を終えた松本剛が、つぶやくように言った。「とうとう４人のうち、１人になってしまうね」。４人とは、２０１１年ドラフトで日本ハムに入団した高卒４人組のこと。近藤（ソフトバンク）、石川慎（ロッテ）はすでに他チームに活躍の場を移し、上沢は２８日の会見で、メジャー挑戦を正式に表明した。米移籍が決まれば、松本剛だけがチームに残ることになる。

　「寂しいけど、やっぱり、うれしいって言ったらおかしいけど、すごいなって思う。近藤の時もすごいなって思ったし、上沢もこれでメジャーなんて行ったら、すごいでしょ、だって。メジャーリーガーですよ」

　４人の関係は深い。毎年一度は、必ず４人だけで集まって食事をする。「飯食って、あーだこーだ言って。結局ね、本当に野球の話しかしてない。終わってみたら、何時間、野球の話すんだろっていうぐらい。５時間、６時間、平気で野球の話をしていますから。最初のころは『１０年できたらいいなぁ』とか言っていたんですよ。『１０年できたら、すげぇよな』『高卒４人全員１０年できたら、すげぇだろ』とか言ってて、１０年やった年の集まりの時は『俺ら、１０年やったな』みたいな。『１１年やる権利、得たよ』って」。今季も誰一人欠けることなく、プロ１２年目を走り抜けた。

　３０歳の代だ。同学年の選手が戦力外通告を受けることも増えてきたなかで、４人は輝き続けている。「これは奇跡でしょ。本当に、すごくない？」。普段、謙虚な松本剛が見せた、誇らしげな表情が印象的だった。