《岩本勉のガン流F論》様変わりした練習法 昔はパンチパーマ、金のネックレス、セカンドバッグが当たり前
プロ野球界の今昔 今回はトレーニング、ファッション
歯に衣着せぬ奔放な物言いで、試合や野球界をぶった切る「ガンちゃん」こと岩本さん。オリジナリティーあふれるフレーズを駆使し、忖度(そんたく)なしに愛する選手たちを称賛、時には厳しく叱咤(しった)する。現役時代は日本ハムのエースとして活躍し、人懐っこいキャラクターでファンからも愛された。オフシーズンの今、ガンちゃんがあらゆる角度からプロ野球界の今昔を語る。今回は、様変わりしたトレーニング方法、そして少々、ファッションについても。
革新的な統計、データ分析 一昔前はすべてがそれぞれの手作業
便利な世の中になったもんだ。プロ野球界もしかり、だ。あらゆる能力や身体状態が数値化され、トレーニング法やさまざまな技術が革新。肉体強化も目覚ましい。統計やデータに困ることがなく、対戦相手の分析にも効果的だ。
選手は常に進化が求められる。それは今も昔も変わらないのだが、われわれの時代は、すべてが手作業。選手個人も日々、独自に傾向と対策を練った。野球ノートは増え続け、その結果、相手打者の打球方向や打撃傾向がおのずと絞られた。それをもとにマウンドに立った。
大切なことは不変 プロ野球選手はよく走る
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
ハッキリ言うと、やっていることに大きな変化はない。あるのは根拠。今も昔も、選手はよく走る。だが、われわれの頃は明確な根拠を示されることは、ほぼなかった。ウエートトレーニングや柔軟運動もそうだ。だから、やらされる練習に不満が募り〝ボイコット〟する者もいた。
ただ、体は実感するものだ。走ることは下半身の強化につながる。走り込めば走り込むほど、投球は安定した。ウエートを重ねることで、バットも軽く感じるだろう。それらの実感が根拠となった。
うまく活用してこそのデータ 継続は力なり
だからこそ、今の選手には言いたい。データや数値はうまく活用するもの。それらは「行動」の前の「理屈」に過ぎない。「継続は力なり」とはよく言ったもので、危機回避能力だったり、反射神経は反復練習でしか得られない。人間の体には反射神経という「神経」はない。努力を重ねることで、反応が素早くなり、反射的に体が動くようになっていく。
数字ばかりにとらわれた合理的な練習は必ずしも効果的な向上にはつながらない。「理屈」と「行動」を巧みに融合させられるプレーヤーこそ、一流、スーパースターになり得る。一昔前も、「とりあえずやってみる」という選手こそが数字を残し、今でいうリバウンドメンタリティーを備えられた。
鉄腕・稲尾から学ぶ継続、反復練習の必要性
継続、反復の重要性を物語る逸話がある。鉄腕と呼ばれた稲尾和久さん。シーズン42勝はいまだ破られないNPB記録だ。お父さまが渡し船の仕事をされていたらしく、子どもの頃から、よく手伝いをしていたらしい。川を何往復もするうちに、体への負担が少なく、疲れない方法を探っていたそうだ。手首や下半身の使い方。それが野球にも生きたと、後に語っていた。危機回避能力にも通じる。
一方で最近、数値を優先するばかりに体、筋力だけが増大し、超人化してしまっているケースも見受けられる。反復練習で得られるはずだった柔軟性や関節の強化がおろそかになり、出力だけアップ。大きなけがを招くリスクがある。すべては使い方次第。新旧の融合がカギだ。
新庄監督、稲葉GMもパンチ経験者!?
ファッションはまるで違う。われわれの頃は、パンチパーマ、金のネックレス、セカンドバッグがプロ野球選手の「三種の神器」。何を隠そう私もパンチをあてた経験がある。いやいや、現日本ハムGMの稲葉のあっちゃんだって、新庄監督だって〝パンチ経験者〟でっせ。それに比べて今は実に多種多様。悪いことではない。スポーツ選手なのだから、清潔感だけは保ってもらいたい。それだけだ。
新たな発想を認めず、否定することは簡単だ。逆に認め、取り入れることには勇気が必要だ。柔軟な思考なくして進化はない。プレーもファッションも同様だ。