母校・北海サッカー部にエール 大学サッカー日本一の富士大・藪中海皇主将「つらくなったら応援席や仲間の顔を見て」
総理大臣杯で東北勢初の全国制覇
北海高サッカー部OBトリオが所属する富士大が、今年の総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントで東北勢初の優勝を成し遂げた。決勝まで5試合にフル出場したDF藪中海皇主将(4年)と、準決勝の法政大戦で貴重なゴールを決めたMF芝西大希(4年)、MF西椋弥(2年)は、それぞれ高校3年時に全国高校選手権に出場した。母校・北海は11月12日に札幌ドームで全国高校選手権北海道大会決勝で同校初の3連覇を目指す。大学日本一を成し遂げた先輩が後輩へ熱いエールを送った。
「大舞台でできるのは自分たちしかない」
藪中がサイドバックとして出場した4年前の決勝は1-0で札幌第一を下して11年ぶりの優勝を達成。今年は創部100周年の節目。「ぜひ勝って欲しい」と大会3連覇に期待を込めた。さらに「楽しむこと。大舞台でサッカーができるのは自分たちにしかできないことだし、ここまで勝ってきた(相手)チームに対しても、最後まで走って戦わないと失礼。北海の校訓に『百折不撓 』『質実剛健』という言葉があるけど、どんなにつらくても、その言葉を思い出せば結果がついてくると思いますし、つらくなったら応援席や仲間の顔を見て、自分の世界に入らないこと」と大一番に挑む後輩にメッセージを送った。
苦難の連続だった初優勝までの道のり
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
優勝までは苦しい戦いばかりだった。1、2回戦を2試合連続の逆転勝ちで勝ち上がると、3回戦の中京大戦は当初の会場が土砂降りで変更。水たまりの中で「サッカーになってなかった」。なんとかスコアレスドローの末にPK戦で辛くも勝利した。さらに準決勝の法政大戦は、0-2で迎えた後半35分にMF芝西のゴールで1点を返すとロスタイムに突入した試合終了間際に同点に追い付き、PK戦の末に勝利をたぐり寄せた。決勝の関西学院大戦は、後半にCKからの混戦で今大会初めて先制点を奪い2-1で逃げ切り勝ちした。
「トーナメントを戦い抜く力、勝負強さを感じた」
富士大の本来のスタイルは、サイドからのクロスや中央から個人技とコンビネーションで崩すサッカー。ただ「全国大会はディフェンスラインはしっかり引いて守備で粘って粘って、前にボールを預けてワンチャンスを狙うのが本当にうまくいった。優勝した実感は本当になくて、トーナメントを戦い抜く力だったり勝負強さは感じたけど、内容は相手の方が上で結果で勝ったって形だった」。中京大や関西学院大にはJクラブ内定者が複数プレー。自分たちのサッカーを捨て〝弱者の戦法〟で優勝をたぐり寄せた。
「自分たちのやれることを全てやりきろう」
2001年の創部以降、過去6度出場も全て初戦敗退の富士大が一気に頂点に上り詰めた。「ジャイキリですね。優勝どうこうってよりかは、自分たちのやれることを全てやりきろうって、やった結果が日本一って結果になってしまって正直驚いてます」。総理大臣杯優勝で12月の全日本大学選手権(インカレ)への出場権も獲得した。「この優勝で富士大学は見られ方が少し変わると思うんですけど、強豪の大学からしたら『たまたまだとか、技術的には俺らのが上』だと思っているはず。なので自分たちは天狗にならず、また1戦1戦、勝利を積み重ねる形でやれば、おのずと結果はついてくるのかな」。インカレでも富士大旋風を巻き起こすつもりだ。
コンサドーレU15時代はベンチ外
藪中主将はコンサドーレ札幌U15出身。「ベンチに入ることも出来ず」U18へ昇格できなかった。「北海の練習に参加した時にボトムアップをやってたんで。監督がやらずに自分たちで時間の管理だったり練習メニューやってるのを見て、(このチーム)いいなって思って」と、同じくコンサドーレ札幌U15にいた芝西と共に進学した。
「(高校で)人間性だったり、気持ちの面を学ぶことができた」
叱咤(しった)は期待の裏返し。「高校時代は島谷監督には怒られてばかりだった」と藪中主将。「入学した時の自分は幼く、人としてまだまだだった。1、2年生の間は人間性の面だったり、気持ちの面を学ぶことができた。自分の分岐点ですね。増田先生って部長がいるんですけど『継続する力』と『決めたことに対しての覚悟』という言葉をもらった。自分の心に留めてる」。2年のインターハイ本大会からレギュラーに定着し3年時には全国大会出場に貢献。富士大では1年から主力として試合に出場してきた。
「北海高校をもっと有名な高校にしてほしい」
北海高は今季のプリンスリーグ北海道で初優勝。藪中主将の代は一つ下の北海道ブロックリーグ札幌1部だった。「もう自分たちとは全然違う。北海高校をもっと有名な高校にしてほしい」。札幌ドームのピッチで自分たちの時と同じように優勝旗を掲げる姿を遠く離れた地から楽しみにしている。