【赤黒戦士、シンジを語る】②DF岡村大八 幼少期の記憶の中に当たり前のようにいたトップ選手
20年以上キャリアが違う〝同期〟が語る
北海道コンサドーレ札幌の選手たちが語ってくれた証言から〝天才〟MF小野伸二(44)の素顔に迫る特集「赤黒戦士、シンジを語る」第2回はDF岡村大八(26)。2021年に復帰した小野と同時期にJ2群馬から完全移籍で加入した。プロ26年目と5年目。年は離れているが、3シーズン共にプレーした〝同期〟が証言する。
複雑な気持ちの中 引退の発表で悲しくなった
引退発表は、事前にチームメートには知らせてあったという。岡村はその話を聞いた時の心境を語った。
「まだやれるんじゃないかなっていう気持ちと、痛みを抱えながらやっているところを見たくないっていう気持ちと、いろんな複雑な気持ちがあって、その中で、やっぱり一番最初に来たのは、寂しいっていう一言につきます。実感が分からなかったんですけど、シンジさんがインスタで発表して、チームからもリリースが出たのを見た時に、『本当にシンジさんが引退しちゃうんだな』っていうのをすごく感じて、その時が一番、悲しくなった。引退してからもボール蹴りましょうって言ったら、多分一緒にボールは蹴られるとは思うんですけど、この宮の沢の練習場で、シンジさんのプレーを間近で見られる機会っていうのは、日に日に少なくなっちゃってる感じはしますね」
チームメートになると分かったときは「マジかよっ」
岡村の加入が発表されたのは20年12月23日。その9日後の元旦、FC琉球から小野の1年半ぶりの再加入が発表された。「最初は、共通の知り合いの方から教えていただいて、もしかしたら行くかもよって。僕もリリースを見て初めて知って『マジかよっ』ってなったのは、すごい覚えていますね」と振り返る。
その存在を認識したのは5歳の時
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岡村がサッカーを始めたのは2歳、その時すでに小野は日本代表として注目を浴びていた。岡村の記憶の中で初めて存在を認識したのは日韓W杯が開催された5歳の時。「ただ、僕はその当時、そこまでサッカーに夢中って感じでもなかったんで、記憶が定かではないけど、それでも自然に僕の記憶の中に当たり前のようにいるシンジさんがすごいですよね。覚えるきっかけがないのに自分が知っている、っていうのがすごい人というのを表していると思います。覚えようとしなくても覚えている、トップレベルの選手」と、その偉大さに改めて驚きを感じている。
技術と発想は到底届かないレベル
21年1月に始まった沖縄キャンプ。そこで40歳を越えてなお第一線でプレーする小野の秘密の一端に触れた。「あ、思ったより体がでかいんだなと。きゃしゃなイメージは持ちがちで、体が細いっていう感じを、みんな持つんですけど、シンジさんって結構、体ががっちりしてて、鍛えてらっしゃいます。それに加えて、やっぱり技術とか、発想とかインスピレーションの部分は、僕たちには到底届かないようなレベルの選手。たぶん本人的には、ケガでいろいろ狂ったり、感覚がズレたりとかってあるんでしょうけど、それでもその技術とインスピレーションを持っていること自体は、僕からしたらちょっと考えられないレベル。ほんと、すごい」と舌を巻く。
人としてもパーフェクト
ピッチで見せる笑顔は、ピッチ外でも一緒で、多くの後輩から慕われている。岡村もその1人で、プライベートでも交流がある。「めちゃくちゃしっかり者ですよ。もう完璧ですよ、人として。一緒にお酒を飲む時もありますし、お酒なしに食事に行く時だったり、遊びに行く時もありますけど、どんな方と会っても、常に腰が低くてしっかりしてらっしゃいます。後輩と焼肉に行くと、自分で焼くんですよ。『お前らがやると下手になるから』って、全部シンジさんが焼いてくれて、もちろんお会計とかもそうですし、飲み方とか周りの見え方とか、社会人としても、本当に完璧な人で、短所が見当たらないというか、パーフェクトな人間。シンジさんの悪口を言ってる人、聞いたことがないレベルですね」と太鼓判を押す。
気持ち良く「最高だった」って言ってもらいたい
現役最後の試合が刻一刻と迫っている。「シンジさんが1秒でも長くピッチに立てる状況、環境をつくりたい。シンジさんが一番最初にプロのユニホームを着たのが浦和ですし、何かしらの運命があると思う。しっかり勝って、気持ち良く『最高だった』っていうふうに、送り出してあげたい。僕たちはただ、それに尽きる」。稀代のファンタジスタの〝ラストダンス〟をチーム一丸で演出するつもりだ。