【赤黒戦士、シンジを語る】③DF西野奨太 25歳下の自分にもいろんなことを気に掛けてくれた
親子ほどの年齢差があるチームメート
北海道コンサドーレ札幌の選手たちが語ってくれた証言から〝天才〟MF小野伸二(44)の素顔に迫る特集「赤黒戦士、シンジを語る」第3回は、現チームの最年少プレーヤーであるDF西野奨太(19)。25歳年上と、親子ほどの年齢差があるチームメートの姿は、西野の目にどう映っていたのだろうか。
小野が札幌に加入した時に見た動画で その存在を認識
西野がこの世に生を受けた2004年。「(プロになる前は)あまりサッカーを見てこなかったので、正直、伸二さんという存在をあまり知らなくて。(14年に)札幌に初めて来たときに、小野伸二さんってどういう選手なんだろうと思って動画を見たりして、そこで知りました」。生まれる前に小野はすでに2度のW杯出場を果たし、オランダの強豪フェイエノールトでの大活躍していたが、物心ついたときにはおそらくもう過去の話。14年はブラジルでW杯が行われており、日本代表は長谷部誠キャプテンを筆頭に、本田圭佑や長友佑都、香川真司らが活躍していた。世界的にも「シンジ」といば、香川や岡崎慎司の名前が先に思い浮かんだ時代だ。当時10歳だった西野にとっても当然、〝アイドル〟はその時代の日本代表だったことだろう。
日本を代表する選手に間違ったイメージ
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そんな西野が小野と初めて対面したのは札幌U-18在籍時にトップチームの練習へ参加したときだ。25歳もの年の差、父親ほどの年齢差がある選手が日本を代表するレジェンドということもあり、普通のプロ選手に対するリスペクトを遥かに超えた、もしかすると畏怖の念に近いものがあったのかもしれない。「日本のトップオブトップのような人。後輩とは口を利かないとか、『自分は日本を代表する選手なので』という感じで、チームメートとの会話もあまりしてないんじゃないかなというイメージだった」と、出会う前はチームの中でも近寄りがたい存在なのではと想像していた。しかし、どんな偉大な人物なのだろうと弱冠の緊張感を覚えながらそのときを迎えたが、そんなイメージはあっさりと打ち砕かれた。
「本当に全然違って。後輩も含めて、いろいろな選手たちに分け隔てなく接してくれますし、いろんなことを気に掛けてくれたり、サッカーのアドバイスをくれたり。本当に、人として素晴らしい人だなと思いました」
21年の天皇杯2回戦で小野に代わってプロデビュー
それからは小野から多くのことを学び、21年にはクラブ初の高校2年生でのトップ昇格。晴れてプロ契約選手となり、7月7日に行われたJ2長崎との天皇杯2回戦では小野と一緒に試合に臨んだ。この日、キャプテンマークを付けていた小野と代わり、後半13分から途中出場。25歳上のレジェンドとの交代で華々しくプロデビューを飾った。そこから3年連続で天皇杯ではともに出場している。今では小野の方から西野のことをいじるなど、チームメートとして何でも言い合えるような間柄までになった。
追いかける背中の大きさが徐々に鮮明に
プロとしての経験を積むうちに、スーパースターとして人生を歩んできた小野の背中の大きさを徐々に実感していくことになる。「人脈の広さがびっくりするぐらいすごい。自分もそうなりたい」。その華やかな世界に対する憧れも徐々に大きくなった。高2でプロ契約を勝ち取った札幌アカデミー育ちの逸材。ポジションやプレースタイルは違えど、試合や練習で得てきたものは決して少なくない。さらに、その大きな存在を間近で見てきたことで、自らの未来像もより具体的に描けるようになったはずだ。札幌に在籍した8年という長い年月の中で、稀代の天才が残してきたものの大きさは計り知れない。