ストロングポイントがなくなったのが非常に痛かった。ひと皮剥けたもっと強いチームに《河合CRC竜の眼》
チーム目標と相反する結果には満足できない
北海道コンサドーレ札幌の今シーズンの試合も25日のアウェーFC東京戦と、12月3日のホーム浦和戦を残すのみとなった。まだ2試合が残っている状況ではあるが、今回は今季の札幌の戦いぶりを振り返りたい。
第32節を終えた時点で9勝10分13敗の13位。7年連続となるJ1残留こそ決めたものの、「ACL出場圏内を常に争える順位を確保し、カップ戦はタイトルを取りに行く」というチームが掲げていた目標とは相反する結果となってしまったことには満足することができない。
前半戦は8位で総得点はリーグ1位だった
シーズン前半の17試合を終えた時点では7勝5分5敗の8位。総得点がリーグ1位の38得点という数字が物語っていたように、攻撃がかみ合った時の爆発力は素晴らしかったし、良いサッカーを見せられているなという印象があった。
その最たるものが5-4で勝利した6月3日のアウェー柏戦だろう。失点を喫しても「それ以上に点を取るんだ」という姿勢を見せ続けられ、札幌が目指しているサッカーができていたのではないかと思っている。
だが後半戦に入ると状況が一変してしまった。15試合でわずか2勝という数字は降格圏にいるチーム以下のもので、辛うじて前半戦の貯金でこの順位にいる格好だ。
後半戦失速の要因は結果論ではあるが
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失速の要因として一番大きかったのはMF金子の移籍だと思っている。彼はドリブルで確実に相手選手1人は抜ける存在だったし、その対応に2人、カバーを含めると3人ぐらい引き寄せられていた。決して彼1人に依存していたわけではないが、金子が相手を剥がせるというのはチームのストロングポイントだったので、そこがなくなったのは結果論ではあるが非常に痛かった。
夏場は9戦勝ちなしも経験
特に苦しかったのが夏場で、6月10日のアウェー鳥栖戦から8月26日のアウェー川崎戦まで9戦勝ち無し(4分5敗)という負のスパイラルに陥ってしまった。札幌はマンツーマンディフェンスの戦術にしているが、夏場は暑さからかどうしても強度が落ちてしまう。途中からはある程度ラインを敷いて構えることもやったが、プレスに行くか行かないかの判断がチームとしてはっきりしなかったので、前後のバランスが崩れてしまっていた。
どこで守備のスイッチを入れるか判断できれば
終盤戦に入ってきて、守備のスイッチを入れる位置を下げたようにみている。そうすることでDFライン裏のスペースが無くなり、ロングパス1本でGKと1対1となるようなピンチを招くことが少なくなった。このあたりは来年へのヒントになったかもしれないし、ゲームの流れの中で、行くところと行かないところ、というのを自分たちで判断できるようになってくれば、ひと皮剥けたもっと強いチームになってくれるのではないかと思っている。
厳しい意見をもらうこともあるが…
ラスト2戦は、プロとして変わらず勝利だけを目指してほしいし、自分たちのストロングポイントである攻撃面でもっと主導権を握ってほしい。ファン・サポーターからも、このままミシャ体制で良いのかという厳しい意見をもらうこともあるが、私は全く変える必要は無いと思っている。攻撃的サッカーを貫いて相手の得点以上に点を取ることができれば、否定的な意見も消えていくと思う。来季に向けても攻撃面でもっとアグレッシブに、2人、3人、4人と攻撃に関わっていくような流動的なサッカーをしてほしい。そのためには、相手のポジションを確認しつつ、自分たちが何をしたいのかを考えながらプレーすることが大事になってくる。
「シンジのために花道を」
特に浦和との最終戦はMF小野伸二の現役ラストゲームとなる一戦だ。「シンジのために花道を」という気持ちを選手、スタッフみんなが持っていると思うので、まずはFC東京に勝って最高の状態で臨んでほしい。
久しぶりに観客動員の3万人超えも予想され、「シンジのプレーを生で見たい」と、初めて来場される方もいるかと思われる。そういう方には「コンサドーレのサッカーはこんなに面白いんだ」ということを実際に見て、感じていってもらいたい。出場する選手には、3万人の観衆の中でもミスを恐れず、アグレッシブに戦って大量得点を狙ってほしい。
センターサークルのバナーに寄せ書き
現在、クラブは、最終戦のピッチ上に掲出するセンターサークルのバナーに書き込む寄せ書きを募集している。シンジはこのクラブに大きなものを残してくれた選手。ファン・サポーターから感謝の気持ちを伝えてもらえれば、そういう気持ちには敏感な人なので、すごく喜んでくれるのではないかと思っている。ぜひ多くの方々に、ご協力をいただきたい。