【道スポ紙面で振り返る「赤黒のシンジ」座談会】①テレビ塔で入団会見、札幌デビュー戦には2万人が集結
小野の特集第2弾がスタート 歴代番記者3人があれこれ
今季限りで現役を引退する北海道コンサドーレ札幌のMF小野伸二(44)の特集第2弾として『道スポ紙面で振り返る「赤黒のシンジ」座談会』をスタートさせる。小野がこれまで辿ってきた輝かしい26年間の現役生活の中で、最も長い時間を過ごしたクラブが札幌となった。道新スポーツでも紙面時代から〝稀代の天才〟の一挙手一投足に注目し、報道を続けてきた。今回の特集では、道スポ1面を飾った2014年の加入から、とくに印象に残った場面をピックアップし、紙面を振り返りながら過去に担当した番記者と現在の番記者とで座談会を展開した。参加者は、現在の月刊コンサドーレ松木純編集長、道新スポーツデジタルの中村真大デスク、そしてサポーターとして20年以上チームを見続けてきた工藤友揮記者。当時の思い出に浸りながら、ざっくばらんに勝手に熱く語り合い、担当していた時代の裏話も飛び出した。当時の紙面とともに紹介する。第1回のテーマは、加入から札幌デビュー戦まで。(以下、敬称略)
<2014年6月10日付1面>
松木「14年6月9日、さっぽろテレビ塔での加入会見というにぎやかな形で、小野が札幌の歴史の1ページを開いた」
中村「小野が札幌に来たということが何よりも驚きでした。世界でも活躍し、W杯にも18歳でデビューして3回出場。当時のプレーはすごく鮮明に覚えています。とくにW杯デビュー戦は股抜きをしたり、ピンポイントのパスを通したり、18歳とは思えない落ち着きとプレーでした」
工藤「加入会見を行った当時は、チームの集合写真を道庁赤れんが庁舎やサッポロビール博物館など、札幌の観光名所で撮影していたのを覚えています。テレビ塔というのもシティープロモーションに貢献していたと思うし、小野のスケール感にもマッチしていたのではないでしょうか」
中村「サポーターの間では小野獲得はどのように捉えられていた?」
工藤「13年オフに最初の話が出たときは、とにかく驚きましたね。クラブの財政事情も厳しかった時代ですし、そんな中であの小野伸二が札幌に来るなんて想像は全くしていなかった。昔、田畑昭宏が札幌に在籍していたときに、浦和時代から仲の良かった小野がたまに札幌の試合を見に来ていたという記事は見ましたが、まさかプレーヤーとして来てくれるなんて夢にも思ってませんでした」
中村「確かにカメラマン時代に厚別のスタンドに来ていた小野の写真を撮った記憶があるよ。関係者入り口から出るところを狙って、ちょうど笑顔の写真が撮れた。今思えば、あの頃からシンジスマイルだったね。紙面には載らなかったと思うけど、個人的にファンだったこともあって、撮影できること自体が嬉しかった」
松木「やっぱり当時の札幌の社長が野々村(現Jリーグチェアマン)だったというのも、一つのきっかけだったのかな。同じ静岡県出身でもあるし」
中村「小野がW杯に初めて出た時(1998年W杯、ジャマイカ戦)は名波浩との交代だった。そういう静岡のつながりというのはあったかもしれませんね」
工藤「小野獲得の話が出る前、野々村と名波が出演しているスカパーの『Jリーグラボ』に小野がゲストに出たことがあって、そのときに冗談っぽく札幌へ誘っていた記憶があります。そのときは番組を盛り上げる笑い話くらいに思っていましたけど、まさか本当にこうなるとは」
中村「野々村社長は冗談みたいな話を膨らませていって、それを実現させるからすごい、という出来事が何度もありましたね」
松木「改めて紙面で振り返ると、これだけの実績を残してきた選手が、34歳というまだまだバリバリできる年齢で札幌に来たというのは本当にすごいこと」
中村「今で言うとイニエスタが神戸に来たぐらいのインパクトだったかもしれません。世界で活躍する人が来たって」
松木「テレビ塔にはサポーターが約400人来たって書いてあるけど、工藤はここにいたの?」
工藤「当時は別の会社に勤めていて、この時は勤務中でした。テレビ塔近くの職場だったので、窓からテレビ塔の方を何度もチラチラと眺めていたのを覚えてます(笑)」
<2014年7月21日付1面>
松木「7月20日のJ2大分戦で札幌デビュー。小野のゴールで勝利!、というわけにはいかなかったけど、お客さんも2万人以上入ってすごく盛り上がった」
中村「当時は2万人が入る試合は何かがないと無かったですもんね」
松木「J2だったこともあったしね。この集合写真の後ろにあるバックスタンドを見ても、お客さんがすごい。やっぱり彼がサポーターを引き寄せたところはあると思う」
中村「期待感が来場者につながったんだと思います。プレーヤーとしても、みんなに『見たい!』と思わせる選手でしたし」
松木「紙面でも『小野効果に期待』という見出しで当時の村井チェアマンの談話を取り上げている。それだけ注目度というのが札幌にとどまらずJリーグ全体に広まっていたんだと思う。Jリーグでのプレーが722日ぶりというのも、日本の小野ファンにとっては嬉しかったんじゃないかな」
中村「工藤は観戦に行ってたの?」
工藤「ゴール裏にいました。小野が本当に札幌のユニホームを着て、札幌ドームでプレーしている姿を見て、もうすごいなって思って。試合展開としては、正直あまり覚えていなくて…。札幌の得点者が宮澤だったということは記事を見て思い出したんですけど、なぜか大分の得点者がラドンチッチだったというのはよく覚えてます。当時、ラドンチッチの子供がものすごくかわいいと話題になっていたことも(笑)。この試合に向けて、確かススキノのラフィラに告知の垂れ幕も出されていた記憶があるんですけど、本当に街全体が盛り上がってきたなと感じていました」