《鶴岡慎也のツルのひと声》特別編 プロ野球選手のお金事情って!? 契約更改の裏側を教えます
〝もう一つの戦い〟をじっくりと解説
長く険しいペナントレース。そしてクライマックスシリーズ、日本シリーズと続いた2023年シーズンが終了した。今季もプロ野球界は大いに盛り上がった。オフシーズンも、来季に向けた調整に余念がない選手たち。〝もう一つの戦い〟も本格化してきた。来季以降の年俸を決める契約更改はファンにとっても大きな関心事。現役時代、日本ハムで通算15年、ソフトバンクでも4シーズンにわたってプレーした鶴岡慎也さんが、気になるプロ野球選手のお金事情について、自身の経験も踏まえて解説する。
一発提示は昔の話 選手にとって必要な下交渉
選手の能力や技術が進歩するように、契約更改も現在と一昔前では、いろいろと変わってきている。以前までは本当に一発提示。会議室や小部屋で、球団側から「これで」と、初めて来季の年俸を示される。
今は選手会との取り決めで、下交渉が行われる。それは面と向かって直接だったり、電話連絡だったり。それぞれ球団や状況によって違いはあれど、査定係の方から事前に金額を知らされる。選手に考える時間が与えられる。
今ではほとんどなくなった保留
昔は、よく選手が保留していた(笑)。それはスポーツニュースなどでもおなじみの光景で、記憶に残っているファンの方々も多いはず。年俸調停にまで持ち込まれるケースもあった。いずれにしても年俸は、目に見える評価の指標。納得するまで、とことん話し合うべきで、しっかりと気持ちを切り替えて、次のシーズンに臨むことが大事だろう。
納得できず粘った2時間 あの先輩から怒りの!?クレーム
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私も一度、提示額に納得できず、契約更改の席で2時間ほど粘った経験がある。でも交渉において、こっちは素人。2時間のうち、半分は沈黙の時間でした(笑)。次の順番だった先輩野手に「ふざけんなよ!いつまで待たせんだ!」と冗談交じりに怒られた。稲田さんですけど(笑)。
一方で、2012年は予想以上の提示をいただいた。116試合に出場し、リーグ優勝にベストナイン。選手会長も務めさせていただいた。喜び勇んでメディア対応したのを覚えている。
プレー同様に大切な交渉 整ってきた環境
選手は当然、プレーが本分。ですが、交渉も頑張らないといけない。それは今も昔も同じ。納得するまで話し合わないと、シーズン中の頑張りが報われない。選手側も根拠を示す必要がある。なぜ納得がいかないのか。今は選手会が必要な資料を作成してくれる。代理人を付けることもできる。環境が整ってきたと言える。
確実に上がってきたプロ野球選手の価値
今は毎年のように、日本人選手がメジャーを目指して海を渡る。日本でも、メジャーのような大型契約が交わされるようになってきた。それはやっぱり、うれしいこと。プロ野球選手の価値が上がってきた証拠でもある。夢を与える職業であってほしい。
夢を与える職業 報道の「推定」は実際の年俸に近い!?
プロ野球選手の年俸は世に知られる。よく報道で目にする「推定」。これは意外と実際の金額に近い。自分に関しては、ほぼ合っていました。何度も言うが、夢を与える職業でもある。頑張って稼いでもらいたい。
お金の使い方も人それぞれ。豪快に買い物する選手もいれば、保守的な人間もいる。ただ、多少の金遣いはOKでしょう。「使った分だけ頑張る」となれば、モチベーション向上につながる。ただ、年俸に見合わない成績に終わったシーズンは、本当に肩身が狭い…(笑)
FAはキャッチボール 必要とされることに喜び
FA(フリーエージェント)に関しては、ある意味でキャッチボールと思っている。私もFAでソフトバンク入りし、また日本ハムに戻ってきた。当然、育ててもらった球団に愛着はある。でも、自分に対する評価も聞いてみたい。期間内に手を挙げると、興味を示してくれる各球団と交渉する。まさにキャッチボール。環境や評価、キャリアなど、あらゆる面から熟考を重ね、選択する。ソフトバンクの時も、また日本ハムに復帰した時も、いずれも必要とされていたことにありがたさを感じました。
決して長くはないプロ野球生活 「納得のいくプレー、交渉を」
プロ野球選手の実働年数は決して長くはない。目いっぱい納得するまでプレーし、交渉してもらいたい。