《鶴岡慎也のツルのひと声》特別編 プロ野球選手の自主トレ事情って?
年明けに本格化する自主トレーニングを解説
ペナントレース、ポストシーズンが終了した2023年のプロ野球。選手は現在、来季を見据えて各地で自主練習に励んでいる。年明けからは全国各地でトレーニングが本格化していく。自主トレは今も昔も千差万別、十人十色。最近はチームの垣根を越えた〝超党派〟での実施が盛んだ。日本ハムで通算15年、ソフトバンクでも4シーズンにわたってプレーした鶴岡慎也さんがプロ野球選手の自主トレ事情を解説。自身の経験を振り返るとともに、近年の流行に警鐘を鳴らす場面もあった。
気候、場所、人数 それぞれに個性が表れる
自主トレ一つにも個性が表れる。温暖な地域で目いっぱい体を動かしたい選手もいれば、寒い場所で、しっかりと芯から鍛え直したい人もいる。価値観の合う者同士、大勢で行う選手も多くなってきた。一方で、スタッフを除き、たった一人自分のペースで進めたいプレーヤーもいる。
球団の垣根を越えた合同練習は近年の〝トレンド〟
近年、目につくのが合同自主トレ。「〇〇が〇〇に弟子入り」などの報道もよく目にする。日本ハムの選手も例に漏れない。若手にとってみれば、実績のあるベテランとの合同練習は魅力的だろう。何か吸収できるものがあればと考えるのも当然だ。トッププレーヤーの一挙手一投足には説得力がある。モチベーション上昇にもつながる。
メリットあれば、デメリットも 明確なのは「上達に近道はない」
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
ただ何事も、メリットがあれば、デメリットも存在する。結果を残している人間と行動を共にするだけで、やった気になってしまう。そんなことはないだろうか。野球はチームスポーツ。されど、プロ野球選手は個人事業主。自ら悩み、試行錯誤を繰り返すことで、心身ともに、たくましくなり、技術も向上する。上達に近道はないはずで、過程が重要だ。そしてプロである以上、すべては自己責任なのだ。
トッププレーヤーには責任も
受け入れる側も肝に銘じなければいけない。後輩の面倒を見るだけが、良い先輩ではない。自身の行動、助言は本当に若手のプラスになるのか。結果を残し、立場を与えられた者ほど、責任が生まれてくる。
体をいじめ抜いた徳之島町トレーニング
私は現役時代、年明けの自主トレを、シーズンを戦い抜くための体づくりの時間と位置づけていた。プロ7年目の2009年からは地元鹿児島県の徳之島町で実施。坂が多く、体をいじめ抜くには最適で、ユニホームを脱いだ21年まで続けた。一時期、川島(慶三)や市川(友也)も加わったが、基本は少数精鋭。自分のペースを崩したくなかった。
当時、同町はスポーツアイランド推進事業を展開していた。そこで、縁あって自主トレ地に選んだ。実は、同事業の担当者が紺田さん(現2軍外野守備走塁コーチ)と国士舘大で同級生だった。紺田さんは私の1つ年上だが、ドラフト同期。そんなつながりもあり、当初は紺田さんと2人で始めた。
徳之島効果で初年度にリーグVとGG賞
私自身、相性も良かった。徳之島自主トレを開始した09年、チームはリーグ優勝し、私も初めてゴールデン・グラブ賞を獲得した。やっぱり、験の良さは気になるものだ。ただ、マチの皆さんがとにかく協力的で、温かい方々ばかり。それも長く続けられた要因。野球教室などでの交流も有意義なものだった。同町の方々との付き合いは今も続いている。
たしか、上武大が同町で合宿をしていた。古川や、今年のドラフトで2位指名された進藤が同大出身。もし、自主トレで同町を訪れる予定があるなら、橋渡しをしたいですね。