秋元克広・札幌市長「活動停止」を表明 相次ぐ逆風に冬季五輪招致の先行き見通せず
冬季五輪は最短でも2042年開催
「冬季五輪・パラリンピック招致関係者意見交換会」が12月19日、関連自治体、団体の代表者らが出席して札幌市内で行われ、秋元克広札幌市長(67)は2014年から継続してきた招致活動を「停止」することを正式に表明した。11月29日に行われた国際オリンピック委員会(IOC)理事会で、2030年、34年の開催地決定が発表され、さらに2038年大会に関しても優先交渉権が他都市に決まり可能性は非常に低い状況。事実上の撤退を余儀なくされた格好だ。
JOC「信頼を取り戻していくためにも」
意見交換会には秋元市長のほか、鈴木直道北海道知事(42)を始め、開催都市や経済団体の代表者らも出席。冒頭、オンラインで参加した日本オリンピック委員会(JOC)の尾懸貢専務理事から「JOCとしては、将来的にオリンピックをはじめとする国際総合競技大会の自国開催の期待を探るためにも、改めて原点であるオリンピックムーブメントを着実に推進し、オリンピックへの信頼を取り戻していくためにも、現在の招致活動は停止することがよいとの考えでまとまりました」と、方針が伝えられた。
意見交換会でも異論出ず
秋元市長はIOCやJOCの方針を受け「仮に2038年大会の招致の可能性が再浮上することがあったとしても15年先。その時に札幌がどのような課題を抱え、その解決に向けたまちづくりに対して、大会の開催がどのような効果を発揮するのかということも見通せない状況で、現在の活動は停止をせざるを得ない」と苦渋の決断を下した。その後に行われた意見交換会でも出席者から異論は出なかった。
老朽化施設の改修は国を頼れず
これにより、市スポーツ局の招致関連部門の職員は縮小方針。前回五輪開催時に整備したジャンプ台や市内の体育館などは老朽化が進んでいたが、五輪開催で見込んでいた国からの補助は見通せなくなった中、粛々と進めていくことになる。
秋元市長は「撤退」という表現を使わず「停止」に拘った。「撤退、あるいは白紙化ということになると、将来においてもそういったことをしないことになります。現時点で先を見通す、時期を見通すことは難しいと思ってますが、将来の芽を残すという意味」と、最後まで「停止」であることを強調した。
将来の冬季大会が明らかにならないと活動に入れない
しかし、招致活動の再開は極めて困難が待ち受ける。「IOCが将来の、特に冬季大会についてさまざまな検討を進めていますので、そういったものが一定程度明らかになってこないと具体的な招致活動に入っていけない」と、現状では手を挙げるための検討材料は皆無だ。「一方でウインタースポーツへの振興だとか、さまざまなまちづくりについてはオリンピックをきっかけにして加速化するではなく、しっかり進めていきたい」と、五輪に頼らない冬季競技振興を目指す。
JOCに苦言「東京大会の問題をクリアして」
今回のIOCの発表を札幌市は事前に知らされていなかった。「JOCが関係をしっかり持って、情報を収集していただきたい。それから、日本国内でのオリンピックに対するムーブメントを高めていくことは、今回の東京大会でのさまざまな問題などをクリアしながら国民に理解をしていっていただく必要がある」と、JOCに対し注文を付けた。
今後、市民に説明の機会設ける
14年に上田文雄・前市長が招致活動を正式表明。その後は9年間に渡って市の人材と予算を投入してきた。秋元市長は今後、市民に説明の機会を設ける方針だ。「いったん検証しつつ、いろいろな事柄について市民にご説明をさせていただく必要があると思ってます。公約の観点では、市民の意向を確認して、そして目指します。市民の意向を確認するまでに至らなかった状況ですので、そういった状況についてもしっかり説明をしていかなきゃいけない」。市民の理解を得られなければ再び札幌に五輪の火が灯ることはない。