【特別インタビュー】札幌ペトロヴィッチ監督 主力を放出して戦う今季も「やり続けられることを自分の仕事で証明する」
主力の田中駿、小柏、ルーカスが退団
2024年シーズンに向け、チームの始動が目前に迫っている。北海道コンサドーレ札幌は年末年始で選手の入れ替わりがあり、攻守においての主力が退団した。さらに今季はレギュレーションが変更され、下位3クラブが降格するというより厳しいシーズンとなる。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(66)はこれまで指揮したクラブの中で最長となる7年目に挑もうとしているが、今季の札幌はどのように戦っていくのだろうか―。道新スポーツデジタルでは昨季終了直後に行われた指揮官へのインタビューを紹介する。
今季はチームをどう再構築していくのか
札幌は昨季までの主力だったDF田中駿汰(26)、FW小柏剛(25)、MFルーカス・フェルナンデス(29)が退団し、チームの精神的支柱だった小野伸二氏(44)が現役引退。15日から始まる沖縄キャンプでは、チームをどのように再構築していくかに注目が集まる。
「基本的なコンセプトは変わらない。より危険にどれだけ相手のゴールに迫れるか、より危険に相手の嫌がるランニングができるか。そういう相手の嫌なことができるのかというところを常に求めながらやるのが我々のサッカーであり、私のトレーニングだ」
新しいアイディアは常に頭の中にあるが
かねてから「サッカーは医学と同じように日々進歩している。学ぶということをしなければ、最新の医療を提供できる医者にはなれないだろう」と口にしてきた。今年のチームはどのようなアップデートが行われるのだろうか。
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「新しいアイディアというのは常に頭の中にある。ただ、選手がそれを消化できるかどうかという問題はある。監督がこういったアイディアで選手にやってほしいと思っても、選手のレベルがそこまで達していなければ、そのアイディアを取り入れることができない。私の頭の中にあるものを、選手ができるレベルにあるのかないのか、そういったところを見極めなければならない」
監督業は過去の実績ではなく明日の結果で評価される
日本では通算18年というキャリアを積み上げ、昨年はそれまで歴代最多指揮記録だった西野朗氏(68)の524試合を更新して日本サッカー史にその名を刻んだ。今季、札幌で7年目指揮となれば、06年途中から11年までの広島、12年から17年途中までの浦和を上回り、指導者キャリアの中で最長の在籍期間となる。
「日本に来る前に(SKシュトゥルム・)グラーツで長く(3シーズン)仕事をしてきたし、広島、浦和、そしてここ札幌でも非常に長い期間で監督として仕事をさせていただいている。これだけ長く仕事をさせていただいていることに感謝と幸せな気持ちを感じている。監督業というのは、なかなか長いスパンで計算できるような職業ではない。過去の実績というより、我々は明日の結果で評価される人間だ。だからこそ7シーズン目ということではあるが、私自身は毎年同じような気持ちで、24年もしっかりと自分自身の仕事をして、自分が監督としてやり続けられるということを、自分の仕事で証明していかなければいけない」
昨季は後半戦に失速して勝ち点40の12位
昨季の札幌は10勝10分14敗、勝ち点40で12位。前半戦は17試合で7勝5分5敗、勝ち点26を稼いで18チーム中8位となり、上位進出も狙える位置で折り返したが、後半戦は夏場に9試合連続で白星に見放されるなど17試合で3勝5分9敗。勝ち点を14しか伸ばすことができなかった。
「サッカーという競技は比較的どのチームも必ず良い時期とうまくいかない時期があるものだが、昨シーズンに関しては特に波のあるシーズンだった。前半戦に関しては勝ち点も含めて比較的良い形で折り返せたと思っているが、その後は長く勝てない時期が続いて、後半戦ではなかなか勝ち点が積み上げられないような状況になった」
23年加入のMF浅野はいきなりキャリアハイ12得点マーク
ゲームの中でも、まさに波があったシーズンだった。ゴールを奪った総得点56はリーグ2位の横浜Mの63、優勝した神戸の60に次ぐリーグ3番目で、失点はリーグワーストタイの61失点だった。広島から加入したばかりのMF浅野雄也(26)は第3節アウェー新潟戦で加入後初ゴールを挙げると前半戦だけで8得点。最終的には自身キャリアハイでチームトップの12得点をマークした。
「彼がここまで得点を重ねるということは、私自身が計算していなかった。サッカーにおける活躍というのは、1シーズンで評価するのは早いだろう。毎年毎年コンスタントに実績を重ねることで、初めて選手としての評価というものを得られると思っている。まだ彼を評価するには早い」
それでも22年はリーグ戦12試合無得点だった浅野が、札幌加入で一気にブレーク。前年に指揮官から直接声を掛けられたことが加入の理由の一つだったようだが、ミシャ流の選手を見る目や、加入後に成長させていく育成に長けているのは確かだ。
「彼を広島から獲得したことにはもちろん理由がある。スピードがある選手であるということが一つの理由であり、もう一つは広島というチームでプレーをしていたからだ。広島は長年、我々と同じような戦い方をしている。そこでプレーしていたということは、我々のチームに移籍して来ても、比較的早い段階で我々の戦い方を理解してプレーできるのではないかと思っていた」
今季はFW鈴木武蔵が復帰し 世代別代表MF近藤友喜も加入
スピードスターの小柏はFC東京に完全移籍したが、19年から20年途中までペトロヴィッチ監督の指導を受け、スピードもフィジカルもあるFW鈴木武蔵(29)が復帰加入する。攻守の要である田中駿や福森も今季はいないが、U-22日本代表のMF近藤友喜(22)やDF家泉怜依(23)といった既にプロの世界で戦っている若手の有望株や、明治大MF田中克幸(21)、福岡大DF岡田大和(22)、そして札幌U-18からトップチームに昇格するFW出間思努(18)といったルーキーたちが加わる。彼らはミシャ流の指導を受けて、どのように成長を見せていくだろうか―。チームの始動まであと1週間。沖縄と熊本でのキャンプでしっかりとトレーニングを積み、タイトルをつかむことができるチームをつくり上げていく。