女王・下北沢成徳に敗戦も旭川実業エース笠井中心につかみ取った堂々3位【春高バレー女子】
■全日本バレーボール高校選手権 第4日(1月7日、東京体育館)
▽女子準決勝 下北沢成徳(東京)3-0旭川実業
31年ぶり準決 岡本監督「ベストを尽くした。堂々と帰れる結果」
チーム全員で戦い抜いた3位だ。31年ぶりに準決勝に臨んだ旭川実業は、昨年高校2冠(高校総体、国体)の下北沢成徳にストレート負けを喫した。しかし、第3セットは24-26の接戦を演じるなど、エースの笠井季璃主将(3年)を中心に女王へと立ち向かった。岡本祐子監督(45)も「ベストを尽くした。堂々と帰れる結果かなと思ってます」と選手たちの奮闘に目を細めた。
最後の瞬間はエースがコートに倒れ込んで涙
最後はエースに託した。セットカウント0-2とされ、第3セットの24-25で迎えた場面。笠井のバックアタックがネットに掛かり、勝敗が決した。ここまでチームを引っ張ってきた大黒柱はコートに倒れ込み、両手で顔を覆った。涙も止まらなかったが、その戦いぶりには会場中から万雷の拍手が送られた。
自主トレで連係磨いたセッター井関が笠井にトス集中
点の取り合いとなった第3セット中盤、チームは一丸となった。笠井がチームメートに「自分を信じて持ってきてほしい」と頼むと、セッターの井関芹花(3年)も「季璃に『持っていくよ』って言って、最後はエースに託しました」とトスを上げ続けた。日々の全体練習後、2人の自主練習で磨いたコンビネーションは王者にも通用するものだった。終盤はバックアタックの連発。「持ってきてくれてうれしかった」と、笠井はチームの信頼に応えるためにアタックを打ち抜き続けた。両チーム最多の22得点をマークし、試合後はチームメートに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えた。
最後まで〝旭実流〟貫く
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そんな笠井を中心に新たな歴史の一ページを刻んだ。春高バレーが2011年から現行の体制になり、初めてのセンターコート。笠井が「バレー以外の私生活とか、チームワークが良くないと勝てない。1人じゃなくてチームで勝つ」と話すように、バレー以外の部分でも自覚を持ちながら、鍛錬を積んだ。コートを出入りするときは必ず一礼するだけではなく、審判が出場選手を確認したあとにも審判に向かって一礼をしてから円陣を組むのが〝旭実流〟。「おじぎを雑にしてしまうとパワーが出ない。日本人として必ず気持ちを持って、丁寧にあいさつをする」と流儀を貫いた。
チームのサーブ効果率では女王を上回る
プレーでは実力の秀でている笠井中心に戦うことに変わりないが、岡本監督が「基本に基づいてプレーしています」と、ミドルブロッカーの谷川星奈(2年)のクイック攻撃や、アウトサイドヒッターの大庭愛海里(3年)、堀田柚音(2年)も相手の高さにひるまずスパイクを打った。また、リベロの石崎茉凜(3年)を筆頭に粘り強くディグを上げた。チーム全体のサーブ精度は高く、効果率11.6は相手の下北沢成徳の10.8を上回った。
卒業後はトヨタ車体へ 笠井「世界一に導ける選手になっていきたい」
卒業後にVリーグ1部のトヨタ車体に進む笠井は「もう一回鍛え直して、新しい自分をつくり直して、世界一に導ける選手になっていきたい」とさらなる進化を誓った。3年間の成長を見守ってきた岡本監督は、涙ぐみながら「最後の1点までエースでキャプテンでやってくれた」と感謝した。チームの快進撃は準決勝で幕を閉じたが、その結果は堂々たるものだった。