青森山田が2年ぶり4度目V 札幌市出身の正木昌宣監督、就任1年で全国制覇【全国高校サッカー選手権】
■第102回全国高校サッカー選手権 最終日(8日、東京・国立競技場)
▽決勝 青森山田3―1近江(滋賀)
第102回全国高校サッカー選手権決勝が8日行われ、青森山田(青森)が近江(滋賀)を3―1で勝利し、2大会ぶり4度目の優勝を飾った。昨年10月に就任した札幌市出身の正木昌宣監督(42)が1年でチームを頂点まで押し上げた。現在はJ1町田で指揮を取る札幌市出身の黒田剛前監督(53)からバトンをしっかり受け取り、2大会ぶりの王座奪還を果たした。以下は正木監督の記者会見での一問一答。
「頑張ってくれた選手たちに感謝したい気持ちだけ」
―試合を振り返って
「本当に選手たちがこの大舞台で緊張することなく、今まで1年間で積み上げてきたハードワークすること、そしていい守備からいい攻撃90分間徹底してくれたことが全てだと思っているぐらい、最後までやってくれたと思います。まだ優勝した感覚もちょっとないけど、本当に頑張ってくれた選手たちに感謝したい気持ちだけです」
「びっくりした形で引き継ぎ、本当に試行錯誤しながらやってきた」
―母校を率いての優勝
「やはり母校で、選手権を優勝したいって思いで指導者になりましたし、去年びっくりした形で監督も引き継ぎまして、この1年は本当に試行錯誤しながらやってきましたけれども、本当に報われたという気持ちで、ただただ感謝しかないです」
「黒田前監督が作ってきてくれたベースに乗らせていただいて」
―選手権の優勝監督になることは想像していたか
「優勝する気持ちで指導者になりましたけど、このような形でできるとは当然思っていませんでしたし、一番はやはり黒田前監督が作ってきてくれたベースがありますので、そこに自分は乗らせていただいているだけです。1回優勝したことによって欲がもっと出てきそうなので、また来年から頑張りたい気持ちでいっぱいです」
―追いつかれた後の戦いぶりはどう見ていたか
「やはり近江さんは本当に力のあるチームで、得点力はかなり警戒していましたし、後半は選手交代やポジション変更から攻勢に来ることは十分想像していました。1点は取られましたけど、選手たちの顔を見ると全く動揺することなくプレーしていましたし、逆に締まったなという感じの顔つきでしたので、やり続けていれば必ず点数は取れるとミーティングでもずっと喋っていましたので、もう選手の状況を見て、特に何かやることなく、今までやってきたことをもう一回整理してやろうってことだけだったと思います」
「誰に相談することもなかった」
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―プレッシャーなどもあったと思う
「本当にとんでもない記録や結果を出してきた前監督から引き継いでの監督スタートでしたので、このような体験をしたことがある人って全国でもあまりいないというのが正直(な話)で、誰に相談することもなかった。ただ、自分なりに前監督と19年やってきて、監督がいた時もいろいろなプレッシャーを掛けられてましたので(笑い)。それに比べると、ちょっと伸び伸びできた部分もありました。皆さんが思っているようなプレッシャーは正直あまり感じることなく、本当にスムーズに渡してくれた黒田前監督に感謝したいですし、そのプレッシャーをはねのけた選手たちが本当に1年間たくましくやってくれていたので、プレッシャーはあまり感じずここまで来られました」
「もうこれで見られないんだと思うと涙が」
―試合後は涙も流していたが、その時の心境は
「泣かない予定で、2年前の黒田前監督の涙を見て『あー、泣いてる』と思ったんですけど、監督で優勝すると勝手に涙が出るんだなと、最後の笛まで本当に選手たちが走って戦ってくれていた姿を見ると、もうこれで見られないんだと思うと涙が。優勝よりもそっちの方がちょっと感動したかもしれません」
―前半から高い位置でプレスを掛けていたが、剥がされる場面もあった。それでもスタイルを変えなかったのは
「(近江は)1人1人、非常に高い技術を持っている選手たちが多いことで、相手のボールホルダーのボールを置く位置をきちっと自分たちの前でと。ゴールを隠しながら自分たちの前でしっかり守備しようと。そして1枚剥がされたとしても、もう1枚という形で、次から次へボールホルダーに対してアプローチできるように、中央の枚数、中盤の枚数をこちらも意図的に増やしながら対応しようと。一番怖かった背後への抜け出しで後半やられてしまいましたけれども、その後はきちんともう一度立ち位置を考えながら、走らせない、進入させないことができていましたので、そこが今回シュートまで行かれなかった要因かなと思います」
―プレミアリーグとの2冠を達成。今年はどういう選手たちが集まったか
「今年の選手たち、3年生全体に言えることですけども、みんなコミュニケーション能力が非常に高いところと、向上心がとてつもなく高い選手たちが揃ったなという印象はあります。やはり、その向上心とコミュニケーションが、チームがどうすれば結果を出せるかとか、個人としてもどうすれば良くなるかを、みんなが会話しながら練習の中でも私が喋る必要がないぐらいコーチングが飛び交う状況でした。昨年11月に行われた新人戦の1週間前から練習しましたけども、その時から常にそういう状況があったので、そこをきちんとうまく活かせれば『来年戦える』って思いを持って新人戦を終えていたので、そこのところが一番、今年のチームの強みかなという風に感じています」
「間違いなく選手たちは動揺した。我々はサポートしただけ」
―黒田前監督から引き継いだ時に、一番最初に選手たちへどのような言葉を掛けたのか
「間違いなく選手たちは動揺しましたし、それは去年の3年生たちが特に一番感じて。ただ、その3年生たちが下を向くことなく、去年の選手権、全国大会も戦ってくれたところがありましたので、特に何かを伝えるということじゃなく、今までやってきたことを決して落とすことなく日常をしっかりやろうと伝えて今年のチームをスタートしましたので、選手に聞いてみないと分かりませんけれども、そういった形で動揺とかではなく、がむしゃらにみんなが目標に向かってやってくれ、我々は本当にサポートしただけでした」
■プロフィール 正木昌宣(まさき・まさのり)1981年5月22日生まれ、札幌市出身。札幌澄川小時代は、FWとして札幌選抜、北海道選抜に選出。卒業と同時に、同学年で現J2山口の元日本代表MF山瀬功治(42)とともにブラジルへ留学して約2年間、サッカーの本場でもまれて帰国。札幌澄川中3年時、中学の先輩が青森山田高に進んだ縁で黒田前監督から声を掛けられて同校へ進学。1年時から公式戦に出場すると、主将を務めた99年の3年夏を除き、インターハイと全国高校選手権で5度、全国大会を経験。仙台大でも2年時から4年時まで全日本大学選抜入り。卒業後の2004年に母校指導のため青森山田高に戻った。