【ジャンプ女子W杯】下川町出身・伊藤有希が今季2勝目に感情爆発「狙って勝つことができた」
■ノルディックスキー・ジャンプ女子W杯
▽個人第10戦(1月14日、札幌・大倉山ジャンプ競技場)
W杯初勝利と同日に大倉山でも初V 個人総合2位に浮上
下川町出身の伊藤有希(29、土屋ホーム)が1本目首位から2本目も会心の飛躍で逃げ切り、今季2勝目をマークした。2017年に宮の森でW杯初優勝した同じ1月14日に、大倉山でもうれしい初優勝となった。これで個人総合で2位に浮上。次週は、W杯通算3勝している蔵王2連戦が行われる。残り17試合の結果次第では、自身初となる日本女子2人目の総合優勝も視野に入ってくる。
聞かされた2本目は129.5メートルの大ジャンプ
伊藤の2本目。助走路から勢いよく空中に飛び出すと、越えれば優勝というラインを大きく越える129.5メートルのビッグジャンプを見せた。着地したあとは両手の拳をグッと握りしめて勝利を確信。珍しく感情を剥き出しにして、駆け寄るジャパンチームと次々に抱き合って喜びを爆発させた。
「今日は私が初めて札幌でW杯に勝った同じ日。2本目の前に言われたのでプレッシャーが掛かったけど、そういう日に、また勝つことができてすごくうれしい」と声を弾ませた。
えっ、今言う?
記念日を知らされたのは、ジャパンの小川孝博チーフコーチ(57)から。今季初めて1本目を首位ターンした時に声を掛けられ、伊藤も「えっ、今言う?」と困惑したという。控室に入ってからは、「30秒に1回ぐらいあくびが出て、『あっ、たぶん緊張してんな』」と冷静に自己分析した。
昔からの大応援団が見えてリラックス
ただ、その緊張はスタート台に上がった瞬間にスーっと消え去った。眼下にオレンジ色に染まった下川町からの大応援団の姿と声援があったからだ。「全員、知っている方ばっかり。ちっちゃい時から一緒に育ててもらっているような、おばさん、おじさんたちばっかり。そういう方たちも見えたり、控室にいても日本チームの子たちのおかげで、リラックスできたかな」。表彰式後には、大応援団と一緒の写真に納まり、ともに喜びを分かち合った。
価値の違う1勝 次のステップへ
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伊藤にとって、これまでの1勝とは明らかに価値が違う。「今までの優勝は狙っていない優勝、たまたま噛み合ってとか、たまたま勝てた優勝が多かった。今回は狙って勝つことができたので、これは初めての経験。自分の次のステップにつながる。沙羅ちゃんもそうだと思いますし、(小林)陵侑くんも完全に狙って勝ちにいっている。自分の次のステップは狙って勝つこと」。夏場から目標に掲げていたことを有言実行で達成し、階段を一つ上がった。
次戦は自身9勝中2勝の蔵王
中3日を挟み、戦いの舞台は山形・蔵王に移る。蔵王は2011年3月に当時女子では世界最高峰の大会だったコンチネンタル杯で初優勝した地。W杯に昇格してからは自身の9勝中2勝を挙げている会場だ。「蔵王は苦手な台なんです。苦手だけど、幸運の地ではある。パワースポットみたいな感じ。もしかしたら苦手意識があるから、変に力まないのかもしれないし、調子によって台の感じ方も全然違うので、今年はどんな感じ方をするか、楽しみにいきたい」。
首位プレブツとは69点差
この日の優勝でポイントを100点積み上げ、首位のニカ・プレブツ(18、スロベニア)との差は69点に縮んだ。次の試合の結果次第では、開幕戦以来の総合首位の座も視界に入る。「やっぱり(総合優勝は)自分の夢の一つではありますけど、1日だけ調子が良くてもできることではない。狙い続けた先にあるのかもしれないし、これからシーズンは長いので、遠い目標ではあるけど、1試合1試合の積み重ねがそこにつながっていく。次の試合もそこに向けた試合になる」。
日本女子最年長が頂点へ
下川中2年時、女子で初開催の世界選手権に出場した。スーパー中学生と注目を浴びた少女は、日本女子の最年長としてチームジャパンをけん引する存在に成長した。数々の経験を積み重ねた今、世界の頂点が現実のものになろうとしている。
■7位に終わった高梨沙羅(27、クラレ)
「かたち的には昨日の課題をしっかりできていると思いますし、ジャンプ自体はレベルも満足いくようなものにはなっていないけど、できる限りのことはできていて、点で繋いでるところを線にできたら。年始から悲しいニュースが多かったので、(伊藤)有希さんの優勝は、日本の方々に元気を与えてくれるビックニュースかなと思います。自分もそういうパフォーマンスを目指してやってきたので、見ていて私も元気をもらいましたし、そういうパフォーマンスができるようにトレーニングしていかなきゃいけないと思いました」