モーグルW杯初出場の川岡士真 雪不足、地震の逆境もはね除け26年冬季五輪へ下克上だ!
3年前の世界ジュニア選手権で初陣初優勝
3年前の北海高3年時にフリースタイルスキー世界ジュニア選手権デュアルモーグルで初陣初優勝した川岡士真(21、北翔大)が、1月19日から始まるW杯北米シリーズ6試合に初出場する。当初、2023-24シーズンは全日本スキー連盟(SAJ)の強化指定から外れていたが、今月7日に富山で行われた選考会で2位となり、2枠しかない切符の中でギリギリで滑り込んだ。北米シリーズに日本男子は今季2勝で個人総合2位の堀島行真(26)ら6人が出場する。川岡は採点配分の60パーセントを締めるターンでのスピードを武器に、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けてステップアップにすることを誓った。
代表6人中、初出場は1人「来年につなげたい」
2年前の左上腕らせん骨折から復活し、川岡が世界最高峰の舞台にたどり着いた。6人の男子代表中、初出場は川岡のみ。「来年のW杯の成績がオリンピック出場に直接関係してくる。まず来年のW杯を初戦から回れるようにするためには、今回の6戦はすごく大事になってくる。一番大事な来年のために、今年しっかり成績を残して、来年につなげられるようにしたい」。少し遠回りはしたが、まだまだ遅くはない。ここからフルアタックで日の丸の座を射止めてみせる。
挑戦権を得るまでの逆風
W杯へ唯一の道が何度も閉ざされかけた。過去2シーズンは雪不足の影響などで選考会は行われていなかったといい、今回も会場となる富山県・たいらスキー場が雪不足の影響で直前まで開催が危ぶまれた。さらに1月2日に小樽からフェリーで新潟へ向かう予定だったが、前日に令和6年能登半島地震が発生。新潟港も影響を受けて欠航の可能性もあったが、なんとか入港。そこから約400キロの道中でも何度も通行止めされている箇所があり、迂回を余儀なくされた。
第2エアー直前にバランス崩したが…
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幸いスキー場に地震の影響はほぼなかったが、コースはまだ雪不足で未完成。スタッフや選手一丸となって、なんとか開催にこぎ着けた。男子選考会には14人が出場し、2本滑って得点の高い滑りを採用する方式で行われた。川岡は1本目に34.27と得点を伸ばすことができなかったが、2本目に65.43をマーク。第2エアー直前にバランスを崩したものの瞬時に技を変更してリカバリーに成功した。滑りの内容こそ満足いくものではなかったが、「W杯に行ける権利を得るか得ないかの2択。3位と2位では全然意味が変わってくるので、最低限の2位」と、まずは世界への挑戦権を引き寄せたことに安堵した。
26年から得意のデュアルモーグルが新種目
川岡にとって追い風も吹いている。モーグルは1人ずつ滑るシングルモーグルと、1対1のノックダウン方式で優勝を争うデュアルモーグルがある。26年の冬季五輪からは川岡の得意なデュアルモーグルが新種目として採用されることが発表されている。「デュアルモーグルは、隣の選手よりうまく見せればいい。他の選手よりも、点数が出ればいい。一対一の真剣勝負の部分が面白い。スピード、ダイナミックさも評価される点として強くて、自分に合っている。堀島さんとはデュアルモーグルで戦ったことはないけど、他の5選手とはスピードだけだったら、全選手に勝てる自負はあります」。今回出場する6試合中3試合がデュアルモーグル。チャンスは大いにある。
W杯では「コーク1080」投入を視野
W杯では全てを出し切る。これまでの構成は第1エアーに「コーク720」、第2エアーでも同じ技にグラブを加えていたが、W杯では世界で主流の「コーク1080」投入を視野に入れている。「まずはモーグル自体を楽しんで滑りたい。その中で自分の技術だったり、持ち味を発揮して、決勝、スーパーファイナル、6位以内を目指して頑張りたい」。巡ってきたチャンスをなんとしてもものにし、再び世界の頂点を目指して行く。
■プロフィール 川岡 士真(かわおか・しま) 2002年7月26日、札幌市生まれ。スキーを始めたのは3歳。モーグルは屯田北小5年生から始めた。屯田北中2年時の全日本ジュニア選手権モーグル中学男子の部優勝。北海高3年の同大会高校の部優勝。世界ジュニア選手権でデュアルモーグル優勝。同校では陸上部にも所属し、2年秋の全道新人戦110メートル障害で3位に入った。卒業後、北翔大に進学。175センチ、73キロ。家族は両親。