【一問一答】レイズとマイナー契約の上沢「あらためて僕はファイターズが大好きだと感じました」
日本ハムからポスティングシステムを利用してレイズとマイナー契約を結んだ上沢直之投手(29)が19日、エスコンフィールド北海道で記者会見を行った。長くチームを支えた右腕は、周囲への感謝と新たな挑戦への思いを熱く語り、海の向こうへ旅立つ決意を表明した。会見には栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO、62)が同席。ドラフト同期の松本剛外野手(30)もサプライズで登場し、花束を贈呈した。一問一答は以下の通り。
ー冒頭あいさつ
「このたびは僕のためにお集まりいただき、ありがとうございます。タンパベイ・レイズに正式入団することが決まりました。ファイターズで過ごした12年間の日々で、思い出が数え切れないぐらいあります。ファイターズに入団できて本当に良かったと思っています。周りの方、ファンの方、球団関係者の皆さま。僕は本当に人に恵まれた野球人生だったと思います。これから国は変わり、チームも変わりますが、ファイターズで学んだことの全てを生かして米国の地へ向かいたいと思います」
ー今の気持ちは
「早く皆さんへ、こういう場で正式にお話したいと思っていたので、少しホッとした気持ちはあります。僕は向こうに行ってから、キャンプイン初日から勝負しないといけない立場。すごく張り詰めている、気が張っている状態です」
ーオファーはいろいろあった。レイズを選んだ理由は
「投手に対する球団全体のプライド。そこで勝つんだという強い思いを、ミーティングをさせてもらって感じた。それが僕の中で決め手になった。僕のことをいろいろ調べて、理解してくださっているのが印象的だった。それでレイズを選択することにしました」
ー特に評価されたのは
「長いイニングを投げてくれることを期待していると言ってくれました。あとは高めに伸びる真っすぐとフォークボールのコンビネーションが良いと言ってもらった。アメリカへ行ったら、落ちる球が重要になってくると思っていた。細かいところも、僕のことを詳しく調べてくださっている印象でした」
ーメジャー契約のオファーもある中でマイナー契約。迷いは
「迷いは正直ありました。すごく評価してくださったチームは他にもありましたし、その中でレイズと他の球団で迷いはありましたけど、今年しっかりメジャーリーグの舞台でレベルアップした姿で投げることを考えた時に、どっちが良いのか考えた結果、レイズという決断に至りました」
ー新庄監督と話は
「直接お会いしてはいないけど、連絡しました。シーズンが終わってから『どうするんだ?』という話をしていただいた。新庄さんがアメリカへ行ってたこともあって、マイナーでの生活はとても過酷だと伝えてくれた。僕も正直、ファイターズで投げるのが好きですし、すごく悩んだ。マイナー契約でもアメリカで勝負させてもらうという決断をした時には『すごく寂しくなるけど、一緒に戦って勝ちたかった』と言ってもらえてうれしかった。僕も、もっと新庄さんの力になりたかったのが正直な思いです。あまり力になれず、スミマセンでしたと言ったら『これから思い切ってやってこい』と言ってもらえて、すごく感謝してます」
ー家族からは
「チームを決断する時も家族には相談しました。お金や収入面を考えると、他のチームの方が安定していたかもしれないけど『僕が好きなところへ行って、やりたいところでやるのが一番じゃない?』と言ってもらえたので、レイズを選択する理由になりました。決まった後には、僕が悩んでいるのを近くで見ていたので、本当に決まって良かったと言ってくれた。これから負担は増えると思うけど、野球人生が終わった時に、家族みんなが幸せでいられるようにしたい。一生懸命これから頑張ります」
ーファイターズでの12年は
「あらためて思い出すと、泣きそうになってしまうので、何とも言いづらい。良い時ばかりではなかったですし、つらい時もたくさんあったので。すごく心が折れそうな時もあった。そういう時にファイターズにいた周りの選手、コーチや監督、球団の方々が僕のことを支えてくれた。素晴らしい人が僕の周りにいてくれたおかげで、ファイターズでなんとか12年間やることができたと思っています。今、この世代に生まれて、ファイターズに所属してなかったら、きっと野球選手を続けていることはないと思うぐらい。本当に周りの方に恵まれた。(レイズ)入団が決まって、今年から一緒にできなくなると思うと、急に寂しさが出てきてた。あらためて僕はファイターズが大好きだと感じました」
ーアメリカにはファイターズの先輩や同僚だったダルビッシュや大谷がいる。メッセージはあったか
「連絡を少し取って、ダルビッシュさんからは『いろいろ大変な時期だと思うけど、ひとまずお疲れさま』と言ってもらいました。ダルビッシュさんや翔平とはアメリカへ行く立場がかなり違うけど、同じチームで過ごした先輩や後輩に追い付けるよう、負けないように頑張りたいと思う。ファイターズの選手はこれだけできると、しっかり見せられたらいいなと思います」
ー北海道への思い
「プロに入るまでは北海道と縁もゆかりもなかった。入団して北海道が大好きになりましたし、今でも住みたい。今年からアメリカへ行かないといけないので、北海道で生活できないと思うとすごく寂しい。北海道という地をここまで深く知ることができて本当に良かった。住んでいる方、環境、北海道の全てが大好き。オフシーズンは北海道に帰ってきたい」
ー高卒同期の近藤や石川からメッセージは
「決まった時にまず同級生(松本剛、近藤、石川)に連絡しました。決まりましたと連絡したら、すごく応援していると。僕がラインで『みんなの活躍が刺激になる。これからやっていく上でも、今までもそうだった。3人の活躍は僕にとって高いモチベーションを保つ上で必要で、重要だった。これからも国は違うけど、みんなが活躍するところを見たい。それを見て刺激を受けて頑張ります』と送ったら、応援していると返してくれた。みんな現役を続けているので、1年でも長く4人でやっていきたいと思います」
―グラウンドの大型ビジョンに、ファイターズの選手たちからのメッセージが流れた
「いや~、危なかったですね。ビジョン、泣きそうになりました。けど、加藤(貴)さんの映像でちょっと涙が引きました。面白さが勝って。あれでだいぶ(涙が)ぐっと戻りました」
―周囲への感謝を口にしていた。ビデオメッセージはうれしい
「そういう選手になれると思ってなかったし、実際こうやっていろんな人に送ってもらえて、周りの人にあらためて感謝しないといけないなと思いました。すごくいろんな感情が湧いてきましたね」
―松本剛選手が来ることは知らなかった
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「知らなかったです。忙しい中、来てくれてありがとうって(伝えました)。剛も伊江島で自主トレしているので。そういう同級生がずっとファイターズにいたし、そういう存在が近くにいて、僕はありがたい環境でやらしてもらっていたと思う。本当に感謝してます」
―ハッパをかけられたりは
「キャンプが終わった時に、ちゃんとメジャーのロースターに入って、開幕から投げられるように楽しみにしているから、って言ってもらえた。僕もそこを目指してやっていきたいなと思うし、キャンプの実戦で抑えれば(メジャーに)上がれるっしょっ、て言われたので、そこを目指して頑張りたい」
―メジャーで抑えるために
「スプリット、落ちる球と高めの真っすぐがすごく大事になってくると思います。そもそも僕は球が速い方じゃないので、いろんなことを使ってタイミングをずらしながら投げていくことが大事だと思います。テンポを変えて投げてみたり、相手にタイミングを取らせないことが大事なんじゃないかと思います」
―その上でオフ取り組んでいること
「とにかく真っすぐはしっかり投げられるようにしないといけない。あとはフォークを多めに練習していますね。なるべく真っすぐに見えるように落とすように」
―シーズンを通してアメリカ仕様に変えたこと
「アメリカ仕様にっていう感じは特にないですけど、シーズン終わっていろいろ動画を見ています。配球の違いとか、たくさんあるので。キャンプに入った時から勉強するのではなくて、入る前から勉強したいなと思っているので」
―どれくらいの球団と話をした
「具体的な数とかはあまり言えない。契約の内容とかも、なかなか言えないですけど、評価してくれた球団は何球団かあった。だから期限ギリギリまで悩みました。期限最終日は本当に濃い一日を過ごしたなと感じます」
―レイズの本拠地にも行ったか
「いや、もともと期限のギリギリまでアメリカにいるつもりじゃなかったので。レイズからは一回来て球団施設を見てほしい、って言われていたけど、帰らなきゃいけなかった。本拠地はキャンプ地と近い。車で1時間半くらいなので、その時でも大丈夫かな」
―最後の1日はどう過ごした
「代理人の方や家族と。めまぐるしく契約の話が、どんどんいろいろと入っていたので、どうしよう?っていう感じではありました。最後は結局、自分で決めて、すごく刺激的な1日でした。決断した後はどっと疲れが来た感じがありました」
―決断は期限のどれぐらい前に
「期限の時間は分かっていた。もし他の球団に行くとなれば、そっちに飛ばないといけない。飛行機の時間もあったし、いろいろと決断しなければいけない時間の1時間ぐらい前です。そこまで悩みました」
―他の日本人選手の大型契約は耳に入っていたか
「それこそ翔平が決まった時も、由伸が決まった時もアメリカにいた。今永が決まった時もずっとアメリカ。毎日チェックしながら過ごしていた。翔平が決まった時はドジャースの近くに部屋を借りていたので、ドジャースのショップに行って『もう翔平の番号があるんだ。早いなあ』と。休みの日に行ってました。(グッズを)買ったりはしなかったです(笑)」
―マイナーは厳しい環境。はい上がるために何が必要か
「ファイターズ、日本球界でやってきたことをガラッと変えることはない。レイズの方と話して『こういうふうにした方がいい』という話があれば、それを聞きながらやっていかないといけない。配球が日本とは違うと思うので。日本なら、この打者はこんな感じというのはあるけど、本当に誰も知らないので。映像で見ているだけでは分からない。投げてないと分からない部分が多い。キャンプから結果を出さないといけないので、チームのアナリストたちとコミュニケーションを取っていくことが大事になる」
―マイナー契約を選ぶにあたって怖さや不安は
「どちらにしろ、今年結果を残さないと、来年の大きい契約は待ってない。どこのチームに所属しても絶対に春のキャンプから結果を残すということには変わりない。悪かった時のことは考えないというか、とりあえずやるしかないし、結果を残すしかない。マイナー契約であろうと、メジャー契約であろうと、先発ローテーションの中に入っていかないと。なので不安や怖さというのはあまりなかったです」
―今永や山本とは違う道のりになる。メジャーに上がることで日本の選手に見せたい姿はあるか
「それこそ僕みたいな選手がアメリカ、メジャーリーグでそれなりに投げられたら、きっと革命的な何かが起きそうな気はする。球速も速くないし、驚くようなものはないけど、それでも抑えられるというところを見せられたら、日本球界にとって良いことになっていくと思う。僕もそれを目指して頑張りたいなと思うし、そうありたいと思う」
―家族は日本に残す
「そうですね。単年のマイナー契約なので。家族には申し訳ないですけど、僕一人で行かせてもらうことになりました。家族のためにも今年は結果を残して来年以降は一緒に住めるように。娘や息子の成長を近くで見られないのはつらいですし、奥さんにも負担をかけるので、しっかり1年勝負したいなと思っています」
―厳しいことに挑戦することが好きなのか
「挑戦することが好きなんですかね、僕。分からないですね。そういう人間じゃないと思ってたんですけど、意外とそうなのかもしれない。成功したら自分の人生において大切な何かを得られるような気がする。下からはい上がるのってすごくいい経験になると思う。そういうのが好きなのかもしれないですね」
―漫画の主人公みたい
「主人公ではないですね。僕は主人公にはなれないけど、主人公に近いところでは戦っている、みたいな。そんな感じで頑張りたいと思います。今は不安というか、やらなきゃいけないっていう緊張感の方が多い。全てにおいて、うまくいかないことがすごく楽しみ。(英語で)これ伝わらないのか?とか。これ頼んだら、これ出てくるのか?みたいな。意外とそういうチャレンジは好きかもしれない。よく分からないご飯とか食べてみたい。メニュー見ただけでは、全く想像できないやつを頼んでみたくなっちゃうタイプなので」
―言葉は勉強中
「勉強しています。向こうに1か月半いましたけど、現地の人は早いので聞き取れない部分が多かったので、もっと勉強しないといけないと思う。自分の言いたいことくらいは言えるようにしないといけない。簡単な英語でも、そこはしっかりやりたいなと思います」
―通訳は
「ファイターズに所属してる方を。球団にお願いしたら『連れてっていいよ』って言ってくれたので。本当にそういった面でもファイターズにあらためて感謝しなきゃいけない。本当にファイターズで野球ができて良かったなって思います」
―再渡米は
「ビザ次第ですけど、早く取れたら、向こうでピッチングとかいろいろして施設に慣れたい。住むところや環境を整えたいので、キャンプの1週間前ぐらいには行きたいです」
―メジャーに上がれば、ダルビッシュや大谷と投げ合う可能性も
「その場で勝負しないといけないなと思います。そこで投げるためにアメリカへ行かせてもらう。すごく楽しみですね。どんな奴らがいるんだろう、どういうレベルなんだろう?ってすごく気になります。その中で戦うのは、人生でもすごく大切な経験になると思う。1日でも早くその舞台で投げるように頑張りたい」