アイスホッケー次世代エリート育成プロジェクト始動 元女子日本代表主将の大澤ちほさんがプロデュース
小学5年~中学1年の男女7人を指導
2022年北京五輪で主将として女子アイスホッケー日本代表「スマイルジャパン」を初の8強に導いた大澤ちほさん(31)が、今年3月から「次世代エリート育成プロジェクト」をスタートさせる。オフシーズンに海外へ挑戦する選手をサポートする一般社団法人「Link」との共同事業で、大澤さんはプロデューサーに就任。1月に行われた最終選考をくぐり抜けた小学5年生から中学1年生の男女7人を半年間かけて指導していく。
将来、日本の顔となる選手を輩出させる
引退後の22年8月に立ち上げた「スマイルプロジェクト」も2年目に突入し、活動は第2段階に移行した。1月3日から3日間に渡った最終選考では、参加した男女28人全員と面接。「これから世界で戦う選手を引っ張っていくようなリーダーを育てるためのプロジェクト。プレーがうまいだけではなくて、人間性が高い、チームのためを思えるような選手を選考した」。将来、日本の顔となる選手を今回のプロジェクトから輩出させるつもりだ。
昨年、日本アイスホッケー連盟の理事に就任
大澤さんを突き動かしているのは、自らの経験と育ててくれたアイスホッケーへの恩返しだ。引退後、解説などを行ってきたジュニア世代の大会を見ていく中で、「強豪校と言われている学校のホッケーを見て、ちょっとレベルが落ちてると感じることもいっぱいある。トップのチームでそうなっているということは、たぶんその下はもっと落ちている」と危機感を感じていた。23年9月には日本アイスホッケー連盟の理事に就任したこともあり、そんな状況を指をくわえたまま見過ごすことはできなかった。
盛岡と新潟で4回キャンプを予定
選ばれた7人が受けるプログラムは多岐にわたる。スキルを磨くキャンプは盛岡と新潟で4回行う予定。さらにオンラインも活用しての栄養セミナーやメンタルトレーニングもあり、アスリートとしてどう戦っていくのか知識を叩き込んでいく。これらは全て無料で行うという。
きっかけは昨年の5月だった。盛岡を拠点に活動していた「Link」代表理事の石賀涼平さんから「サポートコーチとして乗ってもらえないか」と声を掛けられた。その中で今回のプロジェクトへの参画を打診された。「私が知っている限りでは、そういうことをやってる人たちは聞いたことがない」と国内初の試みに挑戦することを決意し、快諾した。
豊富な海外経験を「どんどん伝えていく」
海外挑戦する育成世代の背中を押す。大澤さん自身もソチ五輪後の15年シーズンにアメリカで1年、18~21年はスウェーデンでプレーした。「海外でプレーしたい子たちもいる。そのために選手として、人間として、必要なことをどんどん伝えていく」。4年に1度の五輪に女子は3大会連続出場中だが、男子は1998年の長野大会以降、20年以上遠ざかっている。大澤さんが蒔いていく種が、「普及と育成」の2つの大きな両輪を回し、低迷する日本アイスホッケー界の未来を明るく照らし出す。
■プロフィール 大澤 ちほ(おおさわ・ちほ) 1992年2月10日、苫小牧市生まれ。元日本代表で日本リーグの王子でプレーした父・広利さんの影響で6歳から競技を始めた。2008年、バンクーバー五輪最終予選でチーム最年少の16歳で日本代表FWに選出され、五輪には3大会出場した。苫小牧駒沢大4年時の14年ソチ大会で日本女子としても初出場。予選グループ5戦全敗だったが、18年の平昌大会では五輪初勝利を挙げ、22年北京大会では初の予選グループ突破を果たして8強入りした。大会後に現役引退を表明。23年9月に日本アイスホッケー連盟理事に就任した。現在は札幌を拠点に小学生に無料の教室を行うなど、競技普及に力を注いでいる。