26年冬季五輪の金メダル候補 スノボHP・工藤璃星 ユース五輪でいよいよ世界デビュー
23年全日本選手権で史上2人目の中1女王
天才少女がいよいよ世界デビューする。韓国で開催中の4年に1度のジュニアの祭典、冬季ユース五輪女子スノーボード・ハーフパイプ(HP)に、札幌市出身の工藤璃星(14、チームホクトスポーツ)が初出場する。13歳の年齢制限が解けて初出場した昨年3月の全日本選手権で、史上2人目の中1女王に輝いた。来季はW杯出場が解禁され、世界選手権も開催される。2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪でのメダル獲得が期待される14歳に注目だ。
【動画】今年1月のスイス遠征で1080を練習する工藤
「珍しい技を入れて挑戦したい」
雪上競技最終種目として2月1日に行われる男女HP。20年の前回大会は今季W杯の第3戦で通算4勝目を挙げた小野光希(19)、その前の16年大会は五輪2連覇中のクロエ・キム(23、米国)が制した。工藤が優勝すれば同種目では史上最年少優勝となる。若手の登竜門として注目される国際大会だが、「順位を考えすぎないで楽しみながら自分がやりたいことを狙えれば。いつもやっているルーティン(構成)じゃなくて、珍しい技を入れてみたりして挑戦したい」と本番へのイメージを膨らませる。
昨年5月に選手生命を脅かす大ケガ
工藤のエアーは飛び出し部分から約4メートル。最低部からだと4階建てのビルに相当する約11メートルまで達する。いつも危険と隣り合わせの競技だが、23年5月のアメリカ遠征中に選手生命を脅かす過去最大の危機に瀕した。
今年1月のスイス遠征で復帰もトラウマはない
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
夏場の練習施設で、空気で膨らませた大型マットに着地をした際に右足大腿(だいたい)骨を骨折。腓骨(ひこつ)神経も切断したため、現地で緊急手術を行った。帰国後、リハビリを続けながら同10月に神経をつなぎ合わせる再手術を行った。まだ右足首の屈曲は完全ではないが、今年1月のスイス遠征で手術後初めてHPに入った。「パイプに対してトラウマはあんまりない。慎重になったけど、めっちゃ怖いってわけではなかった」。あどけなさが残る14歳の競技に対する熱意は人一倍だ。
大技・フロントダブルコーク1080を練習
父・佳人さんが見立てる現時点での評価は、女王クロエ・キム、今季W杯デビュー戦で勝利したチェ・ガオン(15、韓国)に次いで3番手。2年後の大舞台を見据え、女子ではまだ主要大会で成功者が出ていない縦2回転、横に3回転する大技・フロントダブルコーク1080の練習にも親子二人三脚で取り組んでいる。工藤は「クロエみたいな力強い滑りがしたい」と、来季出場が解禁となるW杯での対戦を待ち望む。
「五輪はみんなの夢」
工藤にとって五輪は特別だ。Xゲームや世界選手権もハイレベルだが、「オリンピックって、みんなの夢みたいな感じなんで。ちっちゃい子が世界選手権なんて分からない。かっこいいし、オリンピックで1位を取るのが一番」。2年後はまだ16歳の高校1年生。日本女子がまだ成し遂げていないこの種目の金メダル獲得を目指し、世界のライバルたちとの戦いに挑んでいく。
■プロフィール 工藤 璃星(くどう・りせ) 2009年8月28日、札幌市生まれ。北京五輪男子ハーフパイプ金メダルの平野歩夢らを指導していた父・佳人さん(56)の影響で、3歳で板に乗る。19年2月の全国ジュニア選手権ハーフパイプ小学3年の部で初優勝。20-21シーズン、女子最年少となる11歳で高校生以下のナショナルチームに選ばれる。23年の全日本選手権で初出場初優勝。憧れの選手は18年平昌、22年北京五輪金メダルのクロエ・キム(23)。スポンサーはFLUXなど。スタンスはレギュラー。153センチ。家族は両親と妹。